LA - テニス

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「ごちゃごちゃ考えんと、心が告げたまんま俺と付き合うたらええねんで」

やって俺ずっと長いこと好きやってんで。よう我慢とかしたわ。
せやからゆいもチャッチャと俺に堕ちてしまえばええと思う。俺に、溺れてまえばええと思う。




Foll Down  -ホール・ダウン-




俺が毎日ゆいに触れるんは俺が触りたいから。スキンシップよりちょい格上の愛情表現。
当然、他の女にはせえへんし、ゆいにだけしたなる行為であって、そこら辺は何となく気付いとったはずとちゃう?
せやのにゆいときたら、さほど気にした様子もあれへんと勘ぐらん。むしろ、それがウザイとか言うねんで。
どうなんソレ、て突っ込み入れたなるとこなんやけど…それをせんかったのはある意味、自分のためやと思う。
だってそうやろ?ソレ言うたら俺が「お前好き」て言うとるようなもん。教室で告白するんやったら雰囲気欲しいやん。
少なくとも、ガヤガヤしよるような場所で言いとうなかってん。意外にロマンティストやな俺。

「ゆい」

返事があれへん。返事くらいせーや。
硬直しとんのやろか。そないぎゅーてしとらんさかい窒息とかはしてへんと思うんやけど。
こうしてしもたら意外とちっちゃいんやな。いっつも対等に話しよるからもうちょいデカいて思いよったわ。
思うたよりちっちゃい、思うたより細い、思うたよりやらかい。甘い香りとかしよるし。

「ゆい、返事くらいせーや」

なあ、今どんな顔しとるんやろか。さっきはめっちゃ動揺しとって可愛かってんけど、今はどんな顔しとる?
微妙に声掛けた時だけビクビクしよるけど怯えとったりするんやろか。それとも怒っとるやろか。
基本的にゆいは怒りっぽい子みたいやからな。その反応が好きとか俺ん中では有り得へんで。
俺、Mやないし。せやけど何やろな…牙剥いとるんかもしれへんけど、猫が甘噛みしよるようなもんに見えんねん。
そう考えたら可愛らしいもんやろ。可愛らしゅうて可愛らしゅうて、ぎゅーてしたなんねん。

「ゆいー」
「……は」
「は?」
「は…離せ変態眼鏡!」

開口一発目がソレかい。ちゅうか今は眼鏡しとらんし。ゆいが壊してんから。
て、そないなことはどうでもええねん。それよか俺さっき告白してんけど…返事はあれへんのかいな。
「離せ」を連呼しながら胸とか押されても全然意味あれへんてこと、気付いたりせんのやろか。
俺、見たまんまの男やで?ゆいとの力の差は歴然としとるやろうて。

「離して欲しいんやったら返事せんとやろ?」
「あの不可解な選択肢で選べるか!」
「二者択一にしたったやんけ」
「その選択肢自体に問題があるって!」
「んなことあるかい」

「俺のモンになるんのと、俺を自分のモンにするん、どっちがええ?」
何も問題あれへんやんな。俺のモンにゆいがなるんか、ゆいのモンに俺がなるんか。
ちゃんとした選択肢やて思うで?ま、ほんま言うたら俺にとってはどっちでもええねんけどな。

「俺のモンになりとうないなら俺をゆいのモンにしてええし」
「だから!何でそんな選択肢になんのよ!」
「聞きたがり屋さんやな。そんなんゆいが好きやからに決まっとるやん」

「他に何があるんや」て聞いたらだんまりしよる。
あかんなーこうやって話よるけどまだゆいは俯いたまんまで俺、彼女の顔見てへんわ。
人の目見て話はしなさい、て小学ん時に習ってへん?そないなことも忘れとるんやろか。
て、まあ顔上げられへん理由っちゅうんも分かっとるさかい、くすくす笑いながら少しだけ体離してみる。
俺って意外と意地悪なんやろか。ま、どっちかっちゅうと意地悪なんやろな。

「ゆい」
「うが!み、見るな!」
「顔見て、目見て話するんが基本やろ?」

何やねん。此処におる小動物化した生き物は。
むちゃくちゃ可愛らしいんやけど、もっとぎゅーてしてもええやろか。
ちゅうか…こんままでおりたいさかい、離してやれんのやけど…ええやろか。

「俺、ほんまにゆいが好き。愛しとんねん」
「いや、だから…」
「ゆいを愛するんに資格いるんか?」
「いや、それはその…」

教室で軽口叩くのとは明らかに違う俺の声、そして明らかに違うゆいの態度。
もうええやろ。クラスメイトのまんまは嫌や。友達でおるんにも飽きた。ちゅうか嫌や。
その他大勢と同じ扱いとか嫌やし、俺だけ特別な目で見て。俺が見てんのと同じように。
俺はゆいが好き、ゆいやないとあかん、他の女と話しとっても全然おもろないねん。
授業受けとって不意に集中力が途絶えた瞬間、テニスに夢中になっとって不意に我に返った瞬間。
いつも頭ん中に出て来るんはゆいのことしかないねん俺。

「ゆいやないとあかんねん」

そう…堕ちてしもうとるんは俺。
溺れてしもうとるんも俺なんや。だから…一緒に、な。

「せやから俺と付き合うて」



陽は暮れる。時間は刻々と過ぎてく。
別に寒いとか思わへんのはきっとゆいを抱き締めとるからやと思う。
寒いんは嫌いや。せやから余計に、ゆいに拒絶されてしもても離したない。



「か、勘弁して下さい…」
「勘弁も何もないやろ?俺と付き合う言うたら離したろ」
「……」

なあ、今、ドキドキしよる心臓の音はどっちの音なん?
俺の心臓もうっさいけど…もう一つ、微妙にズレたとこで音がするんは何でや?

「俺と付き合う、よな?」

もっと俺にドキドキしてええと思う。チャッチャと俺に堕ちてしまえばええと思う。
この俺に、心底どっぷり溺れてまえばええと思う。



御題配布元 リライト 組込課題・台詞「愛することに資格がいるのか?」


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