LA - テニス

TITLE SERIAL
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「ゆいー」
「ぎゃあ!こ、公然ワイセツだ!触んな変態!」

……男前な彼氏捕まえといてそらないやろ。




Happiness  -ハピネス-




夕暮れ時、そう人もおらん静かでロマンチックな場所で愛を誓うてへんとは言わせへんで。


「俺、ほんまにゆいが好き。愛しとんねん」
「いや、だから…」
「ゆいを愛するんに資格いるんか?」
「いや、それはその…」
「ゆいやないとあかんねん。せやから俺と付き合うて」
「か、勘弁して下さい…」
「勘弁も何もないやろ?俺と付き合う言うたら離したろ」
「……」
「俺と付き合う、よな?」
「つ、付き合うよ。付き合うからとりあえず離して」
「何やのん。やっぱゆいも俺んこと好きやってんなあ」
「なっ、ソレ違…!」
「天邪鬼さんやからアレや。離してほしないって意味なんやろ?」
「勝手な解釈するな!」
「心配せんでも一生離さへんよ」
「誰もそんなこと…!」


ちょおツンツン系やさかいキャンキャン騒がれてもうたけど、思う存分ぎゅーって抱き締めさせてもろて。
で、丁度ええくらいに顔上げた彼女が紅潮して涙目やってんにゾクゾクして思わず何度もちゅーして。
そこまでやっといて「公然ワイセツ」も「触んな変態」もあれへんやろ。こらもう立派に恋人になりましたーっちゅう証拠やし。


「ちょっ、本気で公然ワイセツだよ忍足!」
「何がやねん」
「ここ廊下!人見てる!」
「あー…」

で、昨日の今日。ほんまやったら朝からベタベタしたいとこやってんけど、敢えて放課後まで待ってゆいの背後から抱き締めとる。
ほら、この子照れ屋さんやし、人前やったらきっと素直になれへんタイプの子やから…俺、めっちゃ我慢した。

「ええやん別に」
「良くないよ!」
「ちゅうか、今日も一緒に帰ろー」
「話逸らすな!」

逸らしてへん逸らしてへん。ちゅうか、そないに廊下で騒ぎとうないんやったら素直に俺の言うことに従えばええのに。
大体なあ、俺がこないベタベタゆいにくっついたところで皆「ああ、またか」くらいにしか思ってへんて。
最初から気付いてへんかってんはゆいだけ、他はみーんな知っとる。「忍足はこの子が気に入ってるんだ」ってな。
せやから誰も気にせんて、公然ワイセツには当たらん。ちゅうてもソレに気付いてへんゆいときたら無駄な抵抗を続けよるんやけど。

「はーなーせー!」
「ハイハイ、離したるから一緒に帰ろーに」
「交換条件なわけ!?」
「んーそういうんやないんやけどなあ」

何が不満なんやろ。ええやんなあ?
こーんな男前に好かれてベタベタしてもろて。他の子とかわざわざ自分から突撃して粉砕してーとかしとんのになあ。
そういや今日も下駄箱に変な手紙入っててんけど…アレもやっぱラブレターやったんやろか。



俺はゆいが好きでゆいだけや。



コレを告られる度に言うて、それを延々と繰り返しとんのに皆ようやるわ。ほんま感心する。
そん度に俺は彼女らに負けへんようにゆいにアタックしてくわけやけど……って、ゆい足早っ!手放した途端ダッシュかいな!



「こら!そない早よ帰ってもええことないで!」





何がどうなって俺はこないゆいだけになってしまったんかは分からん。
気付いたら他でもない彼女が気に入って好きになって今がある。この変化はきっと俺にしか分からん。
顔を見るだけで幸せで、話せたならもっと幸せになって…傍におってくれたら俺はどないなるんやろーね。



「はい!つーかまえた」
「ぎゃっ!」
「正レギュの脚力ナメたらあかんでー」

そこそこ命懸けで走ったらしい彼女を捕まえてにこりと笑う。
ゼイゼイ苦しむ彼女の目には俺しか映っとらんくてそれがまた嬉しいし幸せやと思う。

「ほんまにかわええことしてくれるやん。鬼ごっこ好きなん?」
「んなわけないし!」

せやね。ゆいはそない体育とか好きくないしな。

「まあええわ。さ、一緒に帰ろー」
「……くそう」
「そないな顔せんとゆいの好きなもん奢ったるさかい。な?」

何が悔しいんか分からんけど、しかめっ面のゆいを気にせんと手を引いて歩く。
あんなだけ走って疲れたんか今度は抵抗することなく隣を歩いてくれるようでそれだけでまた嬉しゅうなる。

「俺としてはいっつもこんくらい素直やと嬉しいで」
「うるさい」
「色々嬉しいさかい歌でも歌おか?」
「歌わなくていい」


俺はゆいが好きでゆいだけや。
せやからゆいがおるだけで嬉しくて幸せな気持ちになるんやろな。


「あいうぉんちゅーあいにーじゅー」
「A○B48!?」
「せやで。一緒に歌おーや」
「嫌すぎる!!」



2011.03.06.
リライト 組込課題・台詞
「あいうぉんちゅーあいにーじゅー」
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