:: clap




拍手ありがとうございます★


こちらには『仕掛けられた運命』のその後を掲載中です!
本編はこちらよりどうぞ!



以前拍手にて掲載致しました『時間回路』はこちらのclap serialにて掲載中です。(現在連載休止中です…)



それでは、本編へどうぞ!

















君の全てを俺のものに…









ー 仕掛けられた運命 ー

深夜0時のプリンセス アスランside









夜の闇が一段と深くなる深夜23時。

俺は見知った大きな館の前にいた。

数年前までは自分の居場所でもあったこの場所。


ーオーブでのお前の家はここなんだから気兼ねなんてするな…!ー


まだ幼さを残したあの頃のカガリが脳裏に蘇る。


優しくて、純粋で、真っ直ぐな…

そんな彼女に俺は、ああ…といつも曖昧な返事ばかりで。

遠慮がちに一人でいると何度も何度もカガリがそう言ってくれて。

帰る場所のない俺には本当に心の底から嬉しかった。


誕生日にはキラやラクス、使用人達も含めた盛大なパーティーも開いてくれたり…

普段料理などしないのに俺の好きなロールキャベツを山ほど作ってくれたり…

でもそんなカガリの指には無数の絆創膏が貼られていて、それを見た途端泣きそうなくらい嬉しくなって、思わず彼女を抱きしめたりした。


そんなアスハ邸での想い出を温かな気持ちで振り返りながら、俺はある場所を目指して歩き出す。



館の左側、奥にある2階のバルコニーに面した部屋。

あの頃と変わりなければカガリはあそこにいる。


俺は勝手知ったるアスハ邸のセキュリティーを難なくクリアし部屋の前にある大きな木に辿り着いた。


知っている場所…とはいえ、このセキュリティー…ちょっと甘すぎやしないだろうか。

それにこの木…こんな所に立っていたら簡単に館への進入を許してしまう。

どんな輩がカガリを狙っているとも知れない。

明日早急にこの館のセキュリティー強化とこの大木について話し合わなければ。

とはいえ今現在においてこんな便利なものはない。

俺は軽く身をこなし、特に苦労することもなくバルコニーへ進入した。



やっと想いを通わせた想い人は一体どんな顔をするのだろうか。




"今夜君の全てを奪いにいく"




そう伝えたが本気だとは思っていないかもしれない。

多分驚いた瞳で俺の顔を見つめた後、あの言葉を思い出し顔を真っ赤に染め上げるのだろう。

そんな彼女のウブな反応を想像するだけで自分の顔が緩んでいるのが分かる。

勤務中では、いや普段でもあり得ないほどの緩みきった顔を隠すことなく俺はバルコニーに面している大きなガラスの扉を開けた。



しん…–と静まり返った豪華な部屋の中、一際存在感を放つベッドに埋もれている膨らみを見つける。

普通なら違和感しか感じないそれを俺は愛おしく思いながらゆっくりと近づいていった。


布団に潜り込んでいて彼女の美しい金糸すら瞳に捉えられることは出来ないがそれが俺の捜し求めている人だとは分かる。

俺は足音を立てないでそっとベッドに膝を立て、その膨らみに手を伸ばした。




「カガリ…?」



この世界でたった一人の愛しい彼女の名前。

誰にも隠す事なくこうしてく曝け出せるのはいつぶりだろうか。

呼びたくても呼べない、近づきたくても近づけない、触れたいのにそれは決して許されなかったこれまでの日々。

いや、今でも誰に許された訳じゃない…



だが俺自身が許してしまったのだ。


彼女と共にあることを。



彼の…キラの行動がキッカケで…


(…あいつには、一生頭が上がらないな…)


小さい頃からの親友を思い浮かべ、思わず笑みを零す。

すると掌の下にある大きな膨らみがピクリと動いた。


俺は覆い被された布団をそっと剥がし、露わになっていく彼女を見つめる。


白いシーツに散らばる金色の艶やかな髪、赤く火照った頬…


そして俺だけを映し出す琥珀の瞳。



その甘い視線が俺の身体の動きを停止させた。





…これは、おそらく…いや、間違いなく、彼女は俺を待っていた…?




「カガリ……」




胸の内から込み上げる熱い何かを抑え切れず思わず俺は彼女を掻き抱いた。



「あ…っ、アス、ラン…?!」



驚きの声を上げるカガリをそのままに、彼女の細い身体を強く抱きしめる。

感じる彼女の温もり、鼻を擽る爽やかな香り、今ある彼女の全てを手に入れたくて、俺は身体を少しだけ離すと紅く色付く艶やかな唇へと自分のそれを重ね合わせようとした。






その時。






ボーン、ボーン、ボーン……





部屋中に鳴り響くレトロな時計の音。

その大音量に思わず俺は動きを止める。



「これ、は…?」



音する方へと視線を動かすとそこにはいかにも重厚感のある古びた時計が深夜0時を指していた。

数年前ここに住んでいた時、この部屋にこんなものはなかったはずだ。

それにこんな夜中にこの巨大な音を鳴らされたら、迷惑以外の何物でもない。

俺が眉間に皺を寄せ考えを巡らせていると、いつの間にか下を向いてしまった彼女が申し訳なさそうな小さな声で呟いた。



「あ…あの、これは…実は…、」



歯切れの悪い口調で話し出すカガリ。

すると今度は、突然部屋のドアが大きな音を響かせる。


そしてそれと同時に良く見知った"彼"が姿を現した。







「カガリー!」






「「…え……?!」」



廊下の明るい光を浴びながらやってきたのは先程思い出していたあの人物。


茶色い髪にアメジストの瞳、人懐こい笑顔と隠しきれない黒いオーラ…


間違いない、これは…




「キラ?!どうして…?!」




驚きを隠せないカガリが咄嗟に声を上げる。



どうして…、その理由は一つしかない。

俺とカガリの邪魔をしにやってきた、それしか考えられない。


…キラ、お前は俺の味方じゃなかったのか!


ありったけの不満な心を込めてキラを睨みつけると、にこやかに微笑まれ軽くスルーされてしまう。


そしていつの間にかカガリとの距離を縮めていた彼は、流れるような所作で俺から彼女を奪っていった。




「久しぶりにオーブに来たんだから、カガリと一緒にいたくって…」






…半分は本当、といったところだろうか。

もう半分は、ただ邪魔をしたかっただけに違いない…





(はぁ……)





俺は心の中で深く溜め息を零しながら二人の姿を捉える。

俺の方にチラチラと視線を寄越しながら、キラに気を使って遠慮気味に微笑むカガリ。

それに気付いていながら気付かないフリをしているキラ。




…仕方ない、あいつには頭が上がらないんだ。


それに俺たちには明日がある。


明後日も、その次も。


これからはずっと共に…





そうして俺は仕方なく二人の後を付いていくようにベッドから立ち上がる。

すると俺の存在を無視したままのキラが不意に歩みを止めた。





「ていうか、カガリ!今日はどうしてここにいたのさ!」


「え…?!」


「見つけるのに苦労したんだからね!」


「いや…、あの…!」


「今はほとんど物置きみたいなもんでしょ?この部屋」


「わ…っ!あ…、き、きら…!」


「今度からはちゃんと自分の部屋で寝ててよね」






…………




……確かに、良く周りを見渡せば、要らない物が沢山置いてある。

あの大きな時計もその内の一つだったのか。

どうりでカガリの部屋では見たことのないものだったはずだ。




…………


……ということは、つまり、この部屋は今はカガリの部屋ではなくて…


恐らくここではない違う部屋が今のカガリの部屋で…


でも、俺はそんなこと知らないから、当たり前のようにこの部屋に忍び込んだが…




俺が"知らない"のをカガリは"知っていた"から、だから……?



……じゃあ、今夜カガリがここにいた理由は…






俺ははっと顔を上げ彼女を見つめると、そこには湯気が出そうなくらい紅潮した頬を掌で覆い隠すカガリの姿があった。







………まずい…これじゃあ俺の方が顔から火が吹き出しそうだ。









「行こう、カガリ!」




キラに促されながら部屋を後にするカガリ。



その後姿からは先程の照れた表情は確認出来ない。



だが金糸から覗く首すじが真っ赤な色味を帯びていて…



俺の心はそれだけで温かな何がで満ち満ちていった。








だけど今度0時の鐘が鳴る頃には俺の腕で抱きしめておこう。


お伽話のプリンセスのように逃げられない様に。



俺のものだと深く深く印をつけて…






《fin》



予定より長くなっちゃいました〜…。
ラブラブ?とまではいかないものの相思相愛のアスカガを書きたくて…。
ほのぼのとしていただけると嬉しいです!



それでは!拍手ありがとうございました!







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