「戦国無双」恋

□湯中(氏康×甲斐姫)
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小田原城、湯殿


甲斐「ほーんと雨季はやだわ!
身体はベタベタするし
お風呂から出たくなーい
……うう、
でもそろそろ逆上せてきちゃいそう
あーだめだわ!
もーう限界ー!!」



じゃばーん!


脱衣所で甲斐は
厚布を身体に巻き
もうひとつ布で
濡れた髪を拭っていた


小太郎「くくく、湯殿でも
随分騒がしい仔犬だな」


甲斐「へっ?!」


誰もいないはずなのに
背後から声がする
甲斐は振り返る


するとそこには
横に寝転んだ
風魔小太郎の姿があった


甲斐「きゃー!!
ちょ、ちょっとあんた!
いつからそこに居たのよ!」


小太郎「うぬがここへ来る前からだな」



甲斐「えっ!嘘!
全然気付かなかったわよ!」



小太郎「くくく、我は混沌の風
注視せねば我は見えぬ」


甲斐「そんなこと
聞いてんじゃないわよ!
何してたのよ!」


小太郎「昼寝だ…」


甲斐「こんなところで?
最低すぎなんだけど!
って、ずっと居たってことは
あんた、見たでしょ!」


小太郎「何をだ?」


甲斐「何をじゃないわよ!
私の裸を見たんでしょっ!
て言ってんの!!」


小太郎「くくく、
今日は仔犬がよく吠える」


甲斐「うるわい!
乙女が裸を見られて
黙ってるわけないでしょ!!」


小太郎は起き上がる


小太郎「うぬの裸体を
見ようが見まいが
我は欲情などせぬ
案ずるな、くくく…」


小太郎はそう言って
脱衣室から静かに去ってゆく


甲斐「よ、よくじょ・・・・
ち、ちょっとー!!
どう言う意味よあんたっ!
私に色気が無いっての!!
あの混沌っ!!
ぜーったい許さない!!」


甲斐は髪を拭っていた布を
床に叩き投げると
厚布を身体に巻いたまま
脱衣室を怒り任せに飛び出してゆく


左右の廊下を見渡し
小太郎の後ろ姿を見るや
一目散に駆け出す


甲斐「小太郎っ!待ちなさい!
小太郎っ!!小太ーっ!!」


甲斐の大声と同時に
小太郎は突き当たりで姿を消す


甲斐「逃がさないんだから!!」



甲斐は直線廊下を
全速力で突っ走る!!


しかし突き当たりに差し掛かった瞬間
前方から氏康が姿を現す


甲斐「きゃっ!!」


力任せに突っ走った結果
氏康の身体に激突してしまう


そして跳ね返った拍子に
ズテンと床に転ぶ


甲斐「いっっったーい!!」




氏康「痛いじゃねぇ!
餓鬼みてぇに廊下を全力で
突っ走ってんじゃねぇ!ど阿呆が!!」


甲斐「うう、ごめんなさい」


甲斐は身体を擦りながら
立ち上がる


甲斐「あれ?」


立ち上がった途端に
目の前が暗く
だんだん、だんだん暗くなって
視界が狭くなって
くらりくらりと目が回り
氏康の目の前でばたりと倒れた


氏康「おい?小僧?小僧!!」


小太郎「くくく、
ただの湯中りだ」


氏康「湯中りだあ?」


小太郎「湯上がりに
全力疾走などするからだ」


氏康「ったく、しょうがねえなあ」


氏康はぶっ倒れた甲斐を
よいしょと抱き抱える


小太郎「それをどうするのだ?」


氏康「こんな所で
ぶっ倒られちゃあ、大迷惑だ!」


小太郎「くくく、
茹でたては
美味いと言う…」


氏康「食うかよ!ど阿呆が!」
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