リューマ×ブルック(BL)

□鬼人
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第2章-鬼殺死-



取り戻す方法はただひとつ


影を宿すモノを殺す事



―5年前



その姿は
あまりにも酷いものだった



月明かりをさえぎる森の中
闇の狭間でもはっきり理解出来る


肉体から滲むどす黒い赤の血




「何を驚いているのです?
人の形に刃を入れるのは
初めてではないでしょうに」



「な、何故?
心臓を貫いているのに」



「ヨホホ
ゾンビですから…」




「………だけど、だけど」




なんで?
確かに心臓を
貫いているんですよ


この手で、確かにしっかりと
手応えも、ちゃんと……



「まだですよ!
そんな程度で、私は死ねません!
ヨホホホホっ!」


どす黒い笑い声が一面に広がる



こわい…………




その不気味さは
宿り木の鳥達にまで恐怖を呼び
慌て羽ばたいて逃げてゆく




目の前の不可解な出来事に
ブルックの手が震え

余りの恐ろしさに
今にでもこの場から
逃げ出したい衝動にかられた



心臓を貫いた剣刃を
震えながら抜いてゆく


間違いない!
確かにその肉体の感触がある



鈍く汚れた音を鳴らしながら
剣刃と共に胸部から
赤黒い半固まりの血

既に壊れた腐った臓物の一部が
溢れボトりと落ちる


「うわっ!!!」



「………………あーあ、
壊れちゃいましたよ?私の肉体」



相手がゾンビと言うだけで
通常では考えられない事が
今、起きている



恐ろしく震えが止まらない



「し…………死んで下さいよっ!」


ブルックは咄嗟に叫び
黒い血にまみれた剣先を
再び肉体に刺す



また酷く汚れた音がする






「ハァハァ…………」


やはり先程と同じ
貫いた手応えを感じる


今度こそ、絶対に



「まだ生きてますよ?」



「ΣΣΣハッ!!!?」


そ、そんなバカな!






「ぁ…………ぁぁ…………
し、死んで下さい
死んで下さ……
死になさいっ!死になさい!」


私は震える体を圧し殺し
無我夢中で
何回も、何回も何回も…………



その度に
吐き気をもよおす気持ちの悪い音と
穢い臭いに
意識が壊れそうになる




繰り返される行動に
次第にもうろうとしていく


それでも絶えてくれないソレに
数えきれない程
肉体に刺して刺して刺して……




どの程度、時間が経ったのだろう
気が付けばリューマは
ピクリとも動かない





か、勝った!!私は勝ったのだ





ブルックは見下ろし
自分が手を加えた
無惨な彼の胸板をみた



まるで何かを掘り起こした様に
肉片やら臓物が乱れ出ていた



「うっ、うェェェ……
ゲホゲホ、ゲボっドボボボ………」


見るに耐え兼ね
ブルックは突然の
吐き気をもよおし
ソレから飛ぶように離れ
四つん這いに嘔吐する




なんて気持ちが悪い






「ヨホ……ホ…………」




「ギィヤアアアアアアアア」




生きてる?!!



な、何で生きてるんだ!



生きてるはずがない!



あれだけ、
刺さしているんですよ!


なんで、死んでくれないんだ!





殺しても殺しても
死んでくれない



頭がおかしくなりそうだ




もう、おかしいのかもしれない





「ゲホゲボ…………」



ブルックは繰り返しの嘔吐で
その場で気を失い倒れる








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