陰陽師

□「桜」(晴明×博雅)
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安倍晴明の屋敷
庭の桜の木には
満開の花が咲いている

晴明と博雅は春の花見酒と
昼間に飲んでいる



「なぁ晴明、
不思議な事もあるものだなぁ」

「どうした?」

「あの桜をずっと見ていたのだが
ふと、眼を閉じて
再びあの桜を見たのだ
すると何とも不思議なのだ

今しがた見ていたはずのあの桜
まるで違う様に映るのだ」

「ほぅ」

「また眼を閉じ
そして開いて桜を見ても
やはり眼を閉じる前と違って見える
さっぱり分からぬ

しかしな晴明、
何故だか心が踊る様な、
その、悪い気がせんのだ」


「ふふ、嬉しそうだな」

「ああ、そうだ
俺は嬉しいのだ」

「ほぅ」

「晴明よ、俺は
あの桜を見ているだけで
何だか酔ってしまった」


「博雅
あれに酔っているのではなくて
自分自身に酔っているのではないのか?」

「何っ?!どういう事だ!」

「例えば、どこかの姫君に恋をしたとか」

「晴明!!
何ゆえいつもいつも
この博雅の恋の話になるのだ!」

「ふふ、お前はあの桜の花弁と同じだからな」

「なにっ?」

「気紛れな春の風に
あちらこちらに揺られて舞う
桜の花弁の様に
あちらの姫君、こちらの姫君と
恋に惑わされているお前は
揺れる花弁と同じだと言う事だ」

「むっ!
惑わしているのは晴明
お前ではないのか?!」

「クスクス」

「あ!晴明!
また俺をからかって
楽しんでいるな」

「そうではない
俺にとってお前は
お前で言う桜の様だと言っているのだ」

「どういう事だ?」

「お前はあの桜が
まったく異なる様に映ると言うたな」

「ああ、言うた」

「分かりやすく言い換えれば
見ていて飽きぬと言う意味にもなる」

「うむ」

「俺はお前を桜の様だと言ったのは
つまり、」

「俺を見ていて飽きぬと言いたいのか?」

「そうだ」


「・・・んー」

「どうした?」

「晴明、それは褒めているのか?
俺は喜んでもいい事なのか?」

「ああ、大いに喜べばいいぞ」


「あ、やはり馬鹿にしたな」


「ふふ、していないぞ?
もっと褒めるとしたら
俺にはお前が眩しくも映るのだよ」


「せ、晴明・・・
お前、酔っているな」


「ふふ、そうやもしれぬな」





完結

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