陰陽師

□「奪」(晴明×博雅)
1ページ/1ページ


博雅「晴明、大変だ!」

慌ただしい勢いで
晴明の屋敷に飛び込んできた博雅


晴明「騒々しいぞ博雅
一体どうしたのだ?」

博雅「道尊が、
またもや帝の命を狙っているのだ」

晴明「何だ、そんな事か」

博雅「何っ?そんな事ではないぞ
狙われているのは帝だぞ!
晴明、解っているのか?」

晴明「あの男が
どうなろうと良いではないか」

博雅「良くないぞ!
おい晴明!
帝をまた、あの男と!」



博雅「お前、前にも
都がどうなろうと構わんと
言っていたな」

晴明「ああ」

博雅「しかし救ってくれたではないか」

晴明「あの時は
お前の為に行ったのだ」

博雅「ならば、此度も
俺の為に帝を救ってくれないか」

晴明「うむ」

博雅「晴明!いいか
日々、俺とお前が向かい合って
酒を飲んでいられるのも
帝がいて
都が安泰だからなのだぞ」

晴明「ああ、お前の言う通りだ」

博雅「ならば行ってくれるのか」

晴明「ああ、ゆこう」

博雅「おう、ゆこう」

そういうことになった



二人は清涼殿に向かう
牛車の中で向き合っている


博雅「なぁ晴明」

晴明「何だ」

博雅「前にお前は
道尊と然して変わらないと
言っていたな」

晴明「ああ」

博雅「でもお前は道尊とは違う」

晴明「お前がいるからだ」

博雅「俺が?どういう事だ」

晴明「俺はお前に出会って
気付かされたのだよ
この都も悪くない
いや、お前がいる都だから
悪くないと思える様になったのだ」

博雅「晴明、
それは俺も同じだ」

晴明「うむ」


博雅「道尊にも
そういう大切な誰かがいれば
変わっていたのだろうか?」

晴明「・・・いや、
変わるか変わらぬかは
結局のところ道尊次第であろう」

博雅「・・・いや、変われるぞ
俺も変われたのだ」

晴明「そうであったならば
良かったであろうな」

博史「何?ならば居たのか
道尊にも大切な誰かが・・・」

晴明「・・・」

博雅「どうした晴明
なぜ黙っているのだ」

晴明「居たからとて
ただ、それだけの事だ
その者では道尊は救えなんだ」



博雅「どう言う事だ
まるでお前はそれを見てきた様な
口振りではないか」

晴明「そうだな・・・」


博雅「・・・晴明よ
まさか、
その大切な人とは・・・」


晴明「・・・・・・」


博雅「・・・お前だったのか」


晴明「・・・昔の事だ
お前が気に病む事はない」



博雅「いや、晴明
俺が道尊からお前を奪ったのだ」

晴明「それは違うぞ!博雅」

博雅「何が違うのだ!」


晴明「お前がではなく
俺がお前を選んだのだ」


博雅「・・・なぁ晴明
道尊は、もう元には
戻らぬのか?」


切なげで晴明を見る
晴明は御簾を上げて
向かう先の空を見ている


晴明「ああ・・・」

博雅「何か手立てはないのか」



晴明「どうにもならんのだ
こればかりは・・・」





完結

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ