陰陽師

□「髪」(博雅×晴明)
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丑の刻頃
パチリと目を覚ます博雅
暗い天井板がぼんやりと見える

上体を起こし辺りを見ると
やはり暗くぼんやりしているが
この一室は己の寝所ではない
と言う事だけは理解出来る。

博雅は掛け布団を剥いで
立ち上がり、障子戸を開けると
楕円形の月の明かりが
暗い部屋に入り込んで来た

まだ起きて間もない所為か
もうろうとした意識で
廊下に出ると
前には見慣れた庭があった。

それは毎日の様に目にしてる
そう、昨晩もこの庭をみた。


博雅「あ・・・そうか
ここは晴明の・・・」


どうやら昨晩、晴明の屋敷で
ついつい飲み過ぎて
酔い潰れたらしい
段々と記憶が甦ってきた

ふと足元を見ると
寝衣姿を着ている事に気付く

おそらくは晴明の式神らが
自分を寝所に運び
衣服の着替えをも
してくれたのだろう

しかし式神とは言え
あの見目麗しい美女に
身ぐるみを剥がされていたと思うと
急に恥ずかしくなった。


部屋に戻ろうとした時
晴明がひとり
柱に寄り掛かり
座り込んでいる姿に気付く。

博雅は廊下を歩き
晴明に近付くが博雅の気配に
気付かない所を見ると
どうやら眠っている様だ


晴明は髪を下ろしていて
生暖かい風が吹くと
長く黒い髪が優しく揺れ
月の明かりでキラキラと輝いて見えた。


博雅「晴明?寝ておるのか?」


博雅は膝をついて
晴明の顔を覗き
とても小さな声で
問い掛けるも返事はない

博雅は少し寝顔を見つめ
風に揺れる長く黒い髪に
そっと触れる

すると、細くさらりとした髪が
博雅の指を踊る様に通り
晴明の元にふわりと戻ってゆく


博雅「晴明・・・」

吐息に似た囁き声で
再度、名を呼ぶが
やはり返事はない

博雅は顔傾け、自分の唇を
晴明の唇に寄せてゆく


その瞬間
眠っているはずの晴明が
博雅の胸部に二本指を押しあて
ぼそりと何かを唱えた


博雅「へ?はぅ・・・」


すると博雅はその場で
気を失い倒れ
眠ってしまうのでした。


晴明はゆっくり目を開き
眠る博雅を見る


晴明「人の寝込みを襲うでない・・・」
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