陰陽師

□「別」(道尊×晴明)
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朱雀大路を歩く 道尊と晴明


道尊「昨今の都と来たら何ぞ
つまらぬ都に成れ果てたではないか
晴明、そうは思わぬか?」

晴明「都と言う所は
我らにはつまらぬものです
故に酒が美味いと言うものです」

薄笑いを浮かべる晴明


道尊「気楽じゃのぅ」

晴明「そうではありませぬ
何事も来るべき時に来るもの
ならば私は世の行く末を
見届けると致しましょう」

道尊「見届ける?
都か滅ぶるのを
ただ見ると申すか」

晴明「それが運命ならば・・・」

道尊「運命か・・・
仏の面を被った鬼の様だな」

晴明「フッ。人は時に
鬼にも仏にも化けまする」

道尊「人とは実に虚ろいものよ
故に哀れでならん」

晴明「不思議な事を仰有る
まるで人では
ないような物言い」

道尊「ならば私は仏か?鬼か?
お主の眼はどう映る?」

晴明「鬼は鬼のままの姿でしょう
されど仏は鬼にもなりまする
どちらにせよ同じ事・・・」

道尊「ほぅ
私が鬼になると?」

晴明「いいえ、
例えを申しただけの事」

道尊「フッ。まあよい
わしは都を出ようと思うておる」

晴明「そうですか」

道尊「お主も共に来ぬか」

晴明「私に都を滅ぼせと?」

道尊「都に何か思うところがあるのか?」

晴明「・・・・・・・」


道尊「己の運命とやらを
見付けたか」

晴明「ええ・・・」

道尊「私も私の運命に従うまで」


晴明は歩く足を止めて
先行く道尊の背中を見る

晴明「そなたは私の
唯一の友でありました」

道尊も足を止め
空を見上げながら

道尊「お主はわしの
唯一の理解者であったな」

ゆっくりと振り返り
晴明を見る


晴明「我らはいずれ
刃を交える時が来るでしょうな」

道尊「哀しき運命よのぅ」


晴明「まことに・・・」


二人は再び歩き出した。



完結

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