リューマ×ブルック(BL)

□鬼人
1ページ/9ページ

第1章-鬼奇面-


スリラーバーク

大きな屋敷から随分と離れた
生い茂る草木

先程のまで雨が降っていた所為か
湿った土から
何とも言い難い生臭さが
そこら中に漂う


息を切らしながら
黒衣の男が走っている


時折、後ろを振り返り
何かから逃げる様にも伺える


彼の背後、
少し距離があいた場所に

奇妙な鬼のお面を覆った侍が
不気味な笑い声を轟かせる



「ヨホホホホホホ……」


侍は真っ直ぐと前の目標に向かって
一歩、一歩、と茂みを
踏み込んでいく




生温い風が辺りを
通りすぎる瞬間


風を斬り黒衣の男の
頬をすり抜ける様に
鋭い刃を突き刺した



「ギィヤアアアア………」


黒衣の男は恐怖と共に
足をつまずかせ
全身のバランスを崩し
濡れた草地に倒れる


じゅわりと体に染み込んでくる
生ぬるい水滴



「もう、追い付いてしまいましたよ?
元、ご主人?」


倒れた男を見下げながら
侍は囁いた


倒れた黒衣の男は
何とか体を起こすが
立ち上がる事が出来ない


ただ、目の前の
奇妙な鬼の面を被った
侍を見ている



声が出ない………


歯向かう言葉も


命を乞う言葉も


恐怖を前にして、
言いたい言葉が
真っ白になってしまった


「…………ふう
興醒めですねェ。あっけない
私はもっと、刺激ある終りを
期待していたのですがねェ」


気落ちした様に話をするが
どこか淡々としている様にも思える




「あ………あ…………」


ようやく声が戻ってきても
変に喘いでいるのがやっとだ




侍はゆっくり左手で
奇妙な鬼の面を取る



「ヨホホ、さぁご主人
次は貴方の番ですよ?」


何かを楽しむ様に告げる


侍は"付けろ"と言わんばかりに
鬼の面を男に差し出す



「…………い、いや…だ」

差し出された男は
当然抵抗を見せるが
身体中の震えが増してゆく



「ヨホホ、それじゃあ
お遊びになりませんでしょうに!」


そう言うや
怯えた男の顔面を鷲掴み
仰向けに倒す



「あぐっ!!
いやだ…………いやだ」



全身で何とか抵抗するも



自分の体に彼が股がった瞬間
自由が完全に失われた



「ヨホホ…………
さぁ、次は貴方が鬼です」



侍は持っていた
奇妙な鬼の面を
紳士の顔に押し当てた



その瞬間、視界が真っ暗になり
見えるはずもない何かが
目の前に飛び込んできた



「ああああああああああああ…………ぁぁ…ぁ…………」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ