LA - テニス

2008-2011
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ああ、やっぱりなーって思った。





馬鹿だから。きっと彼女はそうするだろうな、と思っていた。
それが裏切られることなく事が済んでいたから…彼女に馬鹿だと言ったんだ。
窓の外、全てがうまくいって嬉しそうに笑うデクノボウを見ながら。

「ねえ」
「何だ?」
「日吉だったらどうしてた?」

自分が長年片想いをしていた相手が幼馴染みで、
その幼馴染みが自分以外の人を好きになって…
それを相談された時に自分に課せられた複数の選択肢。

背中を押すか押さないか、相手をはぐらかしてしまうか、相手にしないか。
それよりも自分を全面に押し出して…告げるか告げないか。

「……知るかよ」

と言い放てば、彼女は「だよね」と他人事のように返事をした。

すでに事済んだ選択に後悔している節も無いくせに今更何を求めていたのだろう。
同調か、異論か、そんなことはどうだっていいだろうに。もう、今更なのだから。
ただ、俺はそうじゃなくて…これからがある。これからの選択肢が、ある。

「私はさ、考えたんだ。友達くらいでいいって」
「好きなのに、か?」
「そう。それに言ってたらそれすら終わってたっしょ?」

一理ある。けど、そんなに脆くないことも、俺は知ってる。
俺は、知ってるから。だけど、んなこと教えてやらねえ。

「友達のままなら肩並べて歩けるよ。幼馴染みだからね」
「……それでいいのかよ」
「それくらいでいいのよ」

彼女は、何処か寂しそうにそう言った。

イイか悪いかを決めるのは他でもない彼女で俺の言葉は反映されることはない。
俺がどうこう言ったところで彼女の決意は変わらないし、全てはもう済んだこと。
何の意味も無い。何の進展も無い。彼女の中では。

……じゃあ、俺は?

「馬鹿だ」

そう、彼女と同じくらい、馬鹿なんだ。

アレしか見てなかった彼女を、どうして好きだと思ったのか。
そしてこの期に及んでまだ言えずにいるのは…また彼女と同じ理由だから。
このままならば…「友達のままなら肩並べて歩ける」からだ。

やっぱり、馬鹿なんだ。

「……あ」
「アイツも、馬鹿だな」

視線に気付いたデカいのが嬉しそうに手を振ってる。
その隣では小さな女がお辞儀をして…ふと横目で見れば穏やかに笑って彼女は頭を下げた。

「あんな馬鹿が良かったのか?」
「……あんな馬鹿でも良かったのよ」
「じゃあ馬鹿は見る目が無いんだな」
「それってどういう意味よ」

そんなの決まってる。
アイツもお前も俺も、見る目がないってことだ。



110613
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