LA - テニス

02-05 携帯連載
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全国大会を目の前に控えていたのに…
俺は思わぬ交通事故と遭遇した。




目を覚ますと、そこは白い病室。
両親と祖父、レギュラー陣が俺を見つめていた。


「国光!」


母は泣いていた。
この年で泣かれるなんて思いもしなかった。
俺は何も言わずにただ見つめていた。
居合わせた全員の顔を…


「心配させてすまない…」


ようやく出た言葉はこれだけ。
他に言葉が見つからなかった。

俺はどんな言葉を掛け、
どんな風に対応していいか、
全くわからなかったのだ。


「国光、あのね…」
「……?」


泣きながら母が俺に告げた。
いや、正確には俺と青学レギュラー陣にだった。


「あなたの足…動かないの…」
「え…?」


俺だけじゃない。
他の誰もが、そう全員が茫然としていた。



その日の面会時間は終わった。
取り残された俺と白い病室。
現実とは厳しいものだった。



「て、手塚くん!」


物音に気付いた看護士たちが俺の病室へと駆け付けた。


「手塚くん!」


驚いたように声を上げる看護士。


「お母さんから聞いたでしょう?あなたの足は…」
「嘘だ…そんなことは嘘だ!」


俺の声は病棟中に響き渡る。



動かない足。
叩き付けられたのは俺の体じゃない。
悲しい現実。




「先生!早く麻酔を…!」


暴れる俺の体を数人の看護師に押さえ付け、
腕に医師が注射を打つ。ほぼ無理矢理に…


「足…俺の足!」
「落ち着くんだ。落ち着いたら全てを話す」
「全国大会前なんです。俺と…部員たちと全国へ行くんです!」


血管の中に流れていく液体の感覚。
それは水が喉を通る感覚とよく似ていた。



――キミには…青学テニス部の柱になってもらいます。

――俺達の代では絶対に青学を全国へ導いてやろうぜ。



走馬灯のように、あの頃の声が…

記憶が甦った。
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