LA - テニス

07-08 PC短編
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---音楽を鳴らす



「真田に問う」

突拍子もなく、ただ目の前に居ただけの真田に詰め寄る。
真夏の炎天下の下、ただ真田は驚いたようで持っていたラケットを落とした。
結構、高値だと思われるラケットを容易くも落とすなんて…
真田風味で言うならば"たるんどるッ"ですよ。

「な、なんだ?」

思わず落としたラケットを拾いながら、質問に答える意思があることを示した。
それでは貴方に問いましょう。最近、よく考える私の疑問を。

「恋愛とは何ぞや」

高級感溢れる大事な大事なラケット。
整えられた芝の上へ、真田は再び落下させていた。



恋愛とは何ぞ



「あーあ、そう日に何度も落として…」
可哀想な真田のラケット。二度も落下させたから、土まで付いてる。
良く見たら、整えられた芝に小さな穴なんかも出来てる。芝も可哀想。
当の真田は…というと、何やら唖然としていた。
「炎天下の中、居眠り?」
「おま…お前がッ」
滑舌が良くない。今のが就職試験の面接だったなら減点3です。
別に変な質問をした覚えもないし、真田が苦手とする裏質問でもないんだけど。
まぁ、わかっていたんだけど…真田に聞いた私が悪かったわ。
でも少しは期待してたんだよ?辞書みたいな返答が来るかなーって。
「別に私は悪くないと思うんだけど?」
「しかしな……ッ」
口を濁しながら顔なんか赤らめて…病気?
普段みたいにビシッと解答してくれても良いのに。もしくは無理、とか。
「……なかなか面白そうな話をしているようだな」
「あ、蓮二」
「俺も混ざるとしようか」
こっちに聞いた方がまともな返答が頂ける可能性大かも。
ノートに書かれたデータの中に素敵な解答があるかもしれないし…
何たって蓮二は"教授"ですから、真田みたいにドモったりはしないわよね。
「ねぇ、蓮二はさー、恋愛って何だと思う?」

―― ぶふッ。

「うわ、きたな!掛かったらどうしてくれるのよ」
教授ともあろうお方が、ダイナミックに空気やら何やらを吹き出した。
ゲホゲホと咳払いをしながらも、必死で何かを堪えているような…
唾が飛ばなかったから良かったものの、今のも減点1だね。
「だ、大丈夫か?蓮二」
「ああ…あまりにも突拍子もない――」
私の顔を見るなり、また吹き出して顔を背けましたよ?
一体、何だっつーの。私の顔は平凡で可笑しくはないハズ。
真剣に悩む女の子を見て笑うなんて、失礼極まりない。
「何なのよ。人の顔見て笑わないでよ」
「いや、す、すまない。何と言うか、な」
ドモりすぎの上に句読点多すぎです。これはもう減点3。
しかも質問に対してのまともな返答もしていないので減点5。
あのね…私が面接官だったら減点方式ですから、二人とも後がないわよ?
特に蓮二。現時点でもう減点9ですからね。
「あーあ、蓮二も期待出来ない存在だったとは幻滅だわ」
「"も"ということは…真田には期待していなかったということか?」
あ、ついウッカリ本音モロ出ししてしまった。
いやいや、ちょっとは期待していたんだってば。ホント。
だけど…期待以上のリアクションだったもんだからダメだなーみたいな。
まぁ、これは蓮二にしても同じことが言えるわ。そんなコトは口にはしないけども…

「大体、なぜそんなコトを(しかも真田なんかに)質問しているんだ?」

うんうん。良い質問ですよ。高く評価しますよ、蓮二くん。
では、まともな解答をして進ぜよう。説くと聞くがいい。



「いやね。最近、どいつもこいつも卒業が近いからか知らないけど恋愛モード一色でしょ?
まぁ、それは別に構いはしないんだけど。だけど、現時点の恋愛なんて永久に続くわけじゃない。
となるとですよ?なぜ、そうまでして彼氏や彼女を今になって欲しがっているのか…
私にはイマイチ分かりかねないところであり、むしろ、学生時代の恋愛が如何なることを生み出すのか。
そこら辺をちょいとばかし賢い人に窺おうかなんて思ったわけですよ」



―――……。

とりあえず、無反応。説明が長すぎたかしら。
要点は掻い摘んでみたつもりだったけど、問題が難しかったかな。
「……志月」
おっと、ここで蓮二ではなくて真田が動き出しました。
私の説明から何か得られる解答でもあった様子ですな。
だけど…どこか不思議な表情なんか浮かべているのが気になりますが…
「お、真田。何か素敵な解答でもくれるのかい?」
発言権を得たところで頑張って言葉にしてもらいましょうか?
期待度アーップ。減点1だったけどプラス1になるかもしれないですよ。
「……馬鹿だな」
「いや、阿呆なのかもしれんぞ」


――ぼほーん。


あの真田氏に馬鹿の称号を頂きました。さんきゅう。
プラスして蓮二教授にも阿呆の称号を頂きました。さんきゅう。
どちらも辞書を引いても良い言葉ではないですが、確かに頂きました。
「……なんでやねん!」
当然ですが突っ込ませて頂きますとも。納得出来ないです。
何で私が馬鹿だとか阿呆だとかの称号を頂かなければいかんのか。
返答を…的確な返答を頂きたいです。説明・解説付きで!


「恋愛は頭でするものじゃないと思うぞ」
「ほほう。その心は?」
「勝手に好きだと思って、傍にいたいと思うからだ」
「ほほう。では問う。真田にもそんな子がいるのかえ?」
「いるからそう答えた」
「ほほーう。では問う。その相手は?」


蓮二はこの炎天下の中、ただ笑っていた。
真田は私に乗せられたまま、相手の名前を口にする。
その場に鏡はなくて、でもきっと真っ赤に染まっていることだろう。
真田も、私も……赤面、日焼けするが如く。



◆Thank you for material offer 煉獄庭園


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