LA - テニス

07-08 PC短編
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「そろそろ、じゃろか?」
下校時刻も過ぎて、巡視する教師の目を掻い潜って…っていうのは無理な話。
だから、手に入れた彼女を部屋へ呼び寄せて、静かにベットへと沈めた。



か く れ ん ぼ



「んんッ」
声を殺して、息を詰めて、組み敷かれている彼女は扇情的だった。
教室ほどのスリルはなくとも、これはこれでソソられるものがある。
綺麗な肢体を晒すのが嫌なようで、隠すかのように何度も何度も布団を上げる仕草。
それが、堪らなく好きだと実感させられる。
「そろそろ慣れた頃じゃろ?」
慣れを知らない体、指で広げて抜き差しを繰り返してもギュウギュウ絞まる。
だけど、最初より慣れたらしいココは次第にキツさを弱めていた。
「仁王…く…ん」
「出来るだけ、痛くないようにする」
ガチガチ震えた体を撫でて、あてがった雄々しいモノをゆっくりと中へ。
詰められた息を吐かせるかのように口付けて、徐々に押し込むと彼女は悲鳴を上げた。



好きになった相手は、いかにも俺とは正反対の子だった。
真面目で教師が好むような生活態度、そして人望も厚く同性の友人が多い。
暗いわけでもないけど、馬鹿みたいに明るいわけでもない普通の女の子。
目を惹かれるほどの子でもない、周りのヤツならそう言っただろう。それでも俺にとっては――…



「やッ、動かないでッ」
「すまんな。それは聞いてやれん」
半分、それだけしか進むことが出来ずにいるモノを無理やりに押し込む。
グチュリと音を立てて、埋まってしまった瞬間に訪れる快感。
だけど、それは彼女にとっては苦痛でしかなくて、顔を歪めて綺麗な涙を零している。
わかりきっていたことなのに、居た堪れないくらいの罪悪感。
俺にとって初めてではない行為であっても、彼女にとっては初めての行為。
繋げた箇所が悲鳴を上げ、それ以上の侵入を拒むかのように絞めつけられる。
「痛い、痛いから――…」
泣いて泣いて、涙を浮かべて許しを乞うかのような表情。
予想通りのこと、だけど予想以上に綺麗で、余計にソソられる。
自分しか侵略していない証拠、俺だけの物だという証拠…それを更に刻みたい。
「もうちょい、我慢して」
「いッ、嫌――…」



どうして、彼女じゃなきゃいけないのだろう。
正反対すぎて手も届きそうにない彼女を、好きだと思った自分。
そこには理由もなくて、だけど手に入れたくて…ずっと、ずっと。
気付けば、遠くから彼女を追うように見つめていた。



無理に律動を続けて、叫ぶ彼女の体は弓なりに反る。
シーツに流れる彼女の鮮血は逆に俺を駆り立てて止まない。
「気持ち、ええ」
自分ばかり気持ち良くて、彼女を泣かして…ああ、なんて残忍な行為。
それでも刻みたくて、彼女に刻みたくて、深く、より深い位置へと侵略を繰り返す。
泣こうが、叫ぼうが、押し退けようが、お構いなしに。
「好いとる。誰よりも…」
「仁王、く…」
俺という存在はあまりにも残酷で、残忍で、酷い男。
それでも彼女は腕を伸ばして、こんな俺にしっかりとしがみついた。



本当は気付かれないように、彼女を見ていたつもりだった。
だって、もし気付かれたならば言うしかなくなるから。
早く気付いて欲しかった反面、ずっと気付かないで欲しかった…
俺の想いは何よりも凶暴で、何よりも凶悪で、彼女を押し潰すだろうから。
壊してしまうのが、怖かった。



「仁王、くん…」
「ゆい…俺の、ゆい――…」

汗ばむ肌を重ねて、荒くなった吐息をも重ねて。
何度も何度も何度も、言葉にならないモノを名前で合わせて。
俺はがむしゃらに腰を振り、彼女はそれを苦痛ながらも受け止め始めていた。
「仁王――…」
「名前、呼んで」
「……まさ、はる」
悲鳴混じりの喘ぎの合間に響く、俺の名を呼ぶ艶かしい声。
部屋に響く卑猥な水音と共に、静かに浸透していく。
行為の終わりなんて、来なければ良い。
ずっと繋がって、彼女と永遠に繋がって、いければ良かった。
「ゆい…イク、ぜよ」
「まさは…る…」



彼女の叫びと共に、大きく爆発を起こし、果てた。



折り重なった体を離す体力はなく、彼女もまた何も言わない。
ただ力なく微笑んでいて、背中に回された腕に力が入る。
口元が少し動いたから耳を寄せて…彼女が小さく囁いた言葉は、



――仁王くん、見つけた。



かくれんぼの結末。
俺は無事に、鬼に捕まった。



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