LA - テニス

07-08 PC短編
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目が覚めた時、大好きな人の腕の中にいたら…なんて、時々思うことがある。
その相手より遅く起きた私は、彼の挨拶で目覚めて。

「おはよう」

そう。こんな風にどこか甘く、幸せな気分で朝を迎える――…



射程距離範囲



「ん――…?」
「ええ加減に起きたらどうじゃ?」
カーテンの隙間から光が差し込んで、ごく普通の朝を迎えてるはず…
それなのに、その横には誰かが居て…ツンツンと私の頬を突付いている。
合宿でも修学旅行でもなくて、間違いなくココは私の部屋。
ぼんやりと見える天井は見間違うこともない、私の部屋の天井。
「はよ起きんと襲うぜよ?」
ツンツンと突付く手が、ふんわりと私を包み込んで…暖かい。
心地良い感覚がハッキリと私の体に刻まれて……
「ま、雅治ッ?」
「休日じゃけんて寝すぎじゃ」
私を優しく抱く手、それが仁王雅治だと気づくのにそう時間は掛からなかった。
思いっきり添い寝して…少し甘い香水の香りが鼻をくすぐってる。
これでハッキリと覚醒した。夢の中から現実の世界へと。
「な、何してんのよッ」
「何…て、昨日遅うまでゲームしとったじゃろ?」
「そうじゃなくてッ。アンタ部屋に帰らなかったの?」
玄関からではなく、そう離れていないベランダ越しに雅治はやって来た。
何か面白いゲームを入手したから…とか何とか言って、夜遅くに。
昔から家族ぐるみで仲が良いとはいえ、ひょいひょい部屋に上げてしまった私も馬鹿だけど。
そのゲームが結構、面白くてハマってしまって…最後に時計を見たのは四時過ぎだった気がする。
「ゆいが寝こけた後、俺も眠うなったけんなぁ」
けんなぁ…じゃ、ないっしょ!床で寝てりゃいいのに、何で隣にいるわけ?
しっかり枕も半々で分けて、狭いシングルベットに並んで二人…
誰かが私の部屋に来た日には大騒ぎになるじゃない。この光景は!
「あ、ゆいの母さんがお昼は適当に、って言うとった」
「ええ?また材料がなくてカップラーメンかぁ…って、お母さんココ来たのッ?」
「おぅ。ちょい前に。留守番頼まれたぜよ」
一つのベットに年頃の男女が並んで寝てて…驚きもせず伝言と留守番?
普通、そんなことしませんよ。雅治だからってそんな対応はないでしょ…
どんな親でも、まずは驚いて大騒ぎで説教すると思うよ?ホントは。
「…お母さんよ…」
適当、放任主義者の母親に呆れた。
私の方が世間一般の母親としてやっていけそうな気がしますがな。
「うん。諸事情、その他諸々はわかった。とりあえず退いて」
シングルベット内での私たちの距離は近すぎた。必要以上に。
しかも、しっかりと抱かれた腕の中、足は少しだけ絡まってる。
身動きなんか出来ない状況下で起き上がるのは不可能に近い。
それに変な動悸までし始めてるから……
「嫌じゃ」
「はぁ?嫌とかそういう――」
「こんなオイシイ状況で、退ける奴がおったら見てみたいがよ」



微笑んだままの幼馴染みは、男の子じゃなかった。



「ちょ…ヤダってばッ」
とてつもなくラフな格好をしていた私は、すぐに肌を露出された。
雅治の手によって、捲り上げられたシャツからは日に当たらない白い胸が…
そこに顔を埋めた雅治の、温かな吐息が逆に冷たく感じる。
「な、何してんのよッ」
「随分、成長したんじゃのぅ」
「そんな親父な台詞……あッ」
背中に回されたしなやかな手がホックを外した。
ふわりと浮き上がったブラの感覚、解放された胸の膨らみ。
そこに雅治は舌を這わせ、口付けた。
「やッ…やめて、まさは――」
綺麗な微笑みを浮かべて、拒絶の言葉を塞いだ。
目の前に広がるのは、整った綺麗な雅治の顔…
閉じられた瞼、長いまつげが良く見えてる。
「んんッ」
押さえつけられて、舌なんか絡めたキスされて…
幼馴染みを性の捌け口に使おうとしている雅治に、怒りが湧く。
それと同時に、何も出来ない自分に情けなさを覚えた。
「急に大人しゅうなったな」
人を嘲笑うような、侮辱するような、その表情に…
恐怖も交えたせいか、涙が出た。
頬を伝い流れていく冷たい雫、悲しくて悲しくて…悔しい。
「…アンタなんか…嫌いよ」
子供みたいな言葉しか紡げずに、それがまた悔しい。
上から見下ろす雅治が、見えないほどに視界が滲んだ。

「俺は、いつだってゆいを抱きたかったぜよ」

舌先で涙を拭われて、見えた雅治の表情。
笑ってもいなかったし、嘲笑うような表情もしていなかった。
ただ、静かに冷静な顔をしていて…

「ゆいを好いとうけん、幼馴染み辞めたんじゃ」

私の心に大きな爆弾を投下して、またキスした。
軽いキスを何度も何度も繰り返して、耳元で囁く。

「いつまでも待つなんて、ガラじゃなかろう?」



日差しの強く入り始めた私の部屋。
覆い被さった雅治のお陰で、その日差しは私の目に強く入ることはない。
代わりに目に入ったのは……鍛えられた幼馴染みの体。
「迷うんなら、大人しゅう身を預け?」
大きな爆弾を投下した幼馴染みは、ガラにもなく私に気を遣ってた。
押し倒されて、着衣は剥がされて、ベットの奥に沈められているのに…
不思議な感覚が、私の中に駆け巡ってる。
「大事に出来る保障は、なかけどな」
「……雅治」
「何じゃ?」
「どうして…」
駆け巡る、言葉にならない想いと感覚と…
ずっと近くにいて、そんな感情すら芽生えない領域にいると思ってた。
私と雅治の間には、ロマンチックなんて言葉もないくらいに。

「ずっと近くにおった、大事な幼馴染みを好きになるのに理由がいるんか?」

何をするにも真剣だった記憶はない。
適当にあしらうのが好きで、だけど隠れて努力もしてて…
隠れた努力があったから適当に適当に、流して流して、そんなことをしてた。
そんな雅治がずっと傍にいて、そんな光景ばかりを目の当たりにしてて…

「……いらない」

その返答を待っていたかのように、雅治はただ微笑んでキスした。
優しく抱きしめて、触れ合った肌が温かいと感じるくらいに…

「俺な、鈍感な姫さんに優しく出来んかもしれん」

波に呑まれて頷いた私に、雅治も頷いた。
越える一線、ずっと敷かれていた幼馴染みというラインが消える時――…



「……くッ」
ゆっくりと侵入してくるモノが、ギチギチと音を立てるかのように痛みを与えてくる。
目を硬く瞑って、歯を食い縛って、痛みに耐えて…迎えていた。
大きすぎる誇張された雅治のモノを。
「ゆい…もうちょい力抜いて…」
受け入れる術を知らない場所は、力を入れることは知っていても抜くことは出来ない。
少し苦しそうな雅治の声を聞いても…私にはどうすることも出来ない。
出来れば私もこの痛みから解放されたくて、我慢している。
「ゆい…ッ」

汗ばんだ肌、優しく包む腕の中で囁かれた私の名前。
あやすかのように背中を撫でで、何度も何度も私の名前を呼ぶ。
呼ばれ慣れたはずの名前と聞き慣れたはずの雅治の声。
私を抱いているのが、本当に雅治なのだと自覚して…
「ん…ああッ」
「ようやく…全部入ったぜよ…」
気が抜けた瞬間に埋め込まれた、大きな雅治のモノ。
ゆっくりとソコに触れれば…根元まできっちりと埋め込まれている。
「入って…る」
「…痛いか?」
痛くない、なんて言えば嘘になる。
裂かれたかのように痛む結合された場所。
だけど、引き返すことは出来ない。この体も関係も…
「ずっと…ずっと俺だけのモンにしたかった」
ゆるゆると動き出した雅治の腰。
それと同時に太く、硬すぎるモノも動いていく。
抉られるような痛みの中で感じる、雅治の優しさ…
「好いとうよ。ゆい」
何度も何度も耳元で囁いて、次第に激しくなっていく律動。
その体にしがみついて声を上げて、共に響くあらゆる音。
突かれる度に聞こえる厭らしい水の音、私の恥ずかしい喘ぎ声、そして…

「俺の…ゆい…ッ」



目が覚めた時、大好きな人の腕の中にいたら…なんて、時々思うことがある。
その相手より遅く起きた私は、彼の挨拶で目覚めて。

「そろそろ起きんしゃい、ゆい」

そう。こんな風にどこか甘く、幸せな気分で朝を迎える――…



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