LA - テニス
□07-08 PC短編
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冬到来につき､私が最大に恐れている事態が起こる…
警戒心はピークに達して､神経質にもピリピリとしながらも歩く道｡
どこに危険があるのかわからない｡急に何かが起こるとも限らない…！
周りをキョロキョロしつつも､私は鞄を抱え込んだまま歩く｡
「あ､ゆい｡おはよ――」
「私に近づかないで！」
駆け寄って来たジロちゃんを言葉で制圧するもすでに時遅し｡
尻尾ふりふりしている子犬のようなジロちゃんは当然､私に触れて来て…
「「イッター！」」
バチバチッと来る電流…そう､冬ならではの静電気｡
ジロちゃんてば寒がりだから制服の下は間違いなくセーターを着込んでいる｡
私はそんな代物は一切着込んでいないというのに…コレはどういうこと？
帯電体質､とでも言うべきなんでしょうか｡私の体は……
静電気少女
「だーかーら！私に近づくなって言ったのに」
本日初のエレキショックに指先がジンジンしたまま､そこを撫でても治らないと知りながらも撫でる｡
ジロちゃんも同じ思いをしたせいか､少し私から離れた位置で並んで歩いてて…
だけど､私ほどのエレキショックは受けていないらしく､しばらくするとまた近づこうとするから叫んだ｡
「ええい､寄るな寄るな！」
「そんなーゆいってばヒドイC〜」
「C〜､じゃないわよ！バチバチすんだから寄らないで！」
予想通り､ジロちゃんの制服の下はセーターらしき代物が見える｡学校指定の物ではなさそうだけど｡
つまりはさっきの静電気の原因はジロちゃんにあるわけで私にはない｡
それなのに何で？何で私の方が重度のショックを受けてるわけ？私は悪くないじゃん！
「あーもう！この季節が一番嫌いよ！」
「俺も嫌い｡寒いC〜」
「そんな適当な理由じゃなくて！」
昨日は雑巾を洗おうと蛇口を捻ろうとした瞬間にバチバチ！
その衝撃で雑巾を落として水が跳ね返って…汚いお水の洗礼を顔に受けた｡
一昨日は試験管を洗おうと水に触れた瞬間にバチバチ！
大事な学校備品の試験管を見るも無残な姿にしてしまい､教師に説教を喰らった｡
私は悪くないのよ！わざとしてるわけじゃない｡これも全て静電気が悪いのよ！
静電気が怖くて毛糸物も防寒具も身に付けられやしないじゃない！どうしてくれんのよ！
「ゆいってば百面相〜」
「うるさいわ！」
ホントに困ってるんだから､毎日毎日四六時中よ｡この静電気には！
金物が怖い､織物が怖い､水までも怖い…どうすればいいのさ！
そもそも､我が家の住人は基本的に静電気を受けやすい体質のよう｡
誰もが気にしていないようで気にしている節があるけども､私が一番酷いとみた｡
家族間で体の一部が触れ合おうものなら…バチバチ！はマックス｡
悶絶もいいトコ｡だから家族とは言えども､誰も近くにはいないという｡
それってどうよ？的な光景は､すっかり家族の中では定着しつつあるんだけども…
「そんなに酷いんだったら､静電気防止グッズ買えばいいのに〜」
「……そんなん効くかもわかんないじゃん」
「えー？俺､一応持ってるC〜､ホラ」
ジロちゃんの左手に付けられたるは､静電気防止グッズだと思われるピンク色のブレスレット｡
何が悲しくて､こんな安物ちっくなブレスレットに頼らねばならんのじゃ…
てか､さっき私と接触した時にバチバチ！ってしたじゃん！インチキグッズじゃん！
「……それ､譲ってくれるわけ？」
「今､思いっきり疑いの眼差ししたのに､興味あるんじゃん」
インチキだと思いつつも､頼れるものには頼りたい｡無論､無料奉仕…タダならば！
本気で悩んでいる割に金にはセコいのです…何か？何か文句でも？
ジロちゃんの目を見つつ､チラッと視線をブレスに流して…またジロちゃんを見る｡
無言のまま､何度かそれを繰り返しているとジロちゃんが観念した様子｡
腕に付けられたピンクのブレスを外して､仕方なく差し出してくれて…
「ゆいがチュウしてくれたらアゲル」
チュウ…チュウと来ましたか｡減るモンじゃないとは思います｡
ジロちゃんが掲示して来た条件に対して､真剣に､前向きに検討…
「検討するかー！」
無理やりに奪おうとして､やらかしたヘマの代償はかなり大きい｡
どこに危険があるのかわからない｡急に何かが起こるとも限らないと知りながらのヘマ｡
「「イッター！」」
本日二度目のエレキショックでバッチリ目が覚めた｡
効果はあくまで個人差があります…そんなモンに頼るべからず｡
ジンジンしてる指先を治らないと知りながらも撫で､私はジロちゃんを背にダッシュ｡
"そんなモンいらんわー"と捨て台詞を吐きながら｡
その日､ジロちゃんは学校へ来ませんでした｡
その代わり､翌日には沢山の静電気防止グッズを片手に売り子さんをしていました｡
お客さんは私一人だけに絞って､昨日と同じ条件を出しながら…
◆Thank you for material offer 煉獄庭園
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