LA - テニス

07-08 PC短編
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---音楽を鳴らす


人を想う気持ちは様々で、誰かが何処かで他人を想う。
知る人も知らぬ人も…誰かを想って胸を痛めていることだろう。
楽しいばかりではなく、苦しい気持ちも味わっているだろう。
それでも人は独りじゃ生きていけないから…他人を求めていくのでしょう。
自分以外の誰かに認めてもらいたくて、傍に居たくて…















く 溺れる















人知れず涙を流すことがある。
誰にも悟られたくなくて、声を押し殺して…
自分の部屋、携帯をきつく握り締めて泣くのはもう何度目だろう。
いい加減、飽きることも知らないこの行動をとるのはもう嫌だ。
いつもいつも…そう思いながらも泣いている。
好き好んで泣いているわけじゃない。
だけど枯れぬ涙はずっとずっと頬を伝っていくばかり。





この涙が枯れた時……

私は笑うことが出来るのでしょうか?





「悪いな、ゆい。昨日は先客があった」
「そう…」
「それから今日も先客があるから、帰りは別な」

彼から貰った肩書きに何の意味があるのだろう。
私が望んでいたモノっていうのは、一体どんなモノだったんだろう。
廊下を歩く背中をどれだけ眺めて、私は堕ちてゆけばいいのだろう。
私にとっての優先順位は全て景吾。
だって、貴方が最初にそう言ったから…馬鹿みたいに守ってる。
だけど…景吾の優先順位の中で私は何番目にいる?

「……」

きっと、頭の中にある程度の位置に私はいる。
それを思うと…ここが何処であろうとも泣きたくなる。
人前だろうと何だろうと大声で、子供のように泣きじゃくりたくなる。
敢えてそれをしないのは…貴方が望まないから。





ねぇ、貴方にとって私という存在は何ですか?





知らないわけじゃない。先客という名の相手のこと。
綺麗なお姉さんから可愛らしい下級生まで。
知っている子もいれば、知らない子も貴方の隣で可愛く笑っている。
時折、私が隣に居た時…景吾は笑っていなかった。
だから…私も笑うことなんか出来ずに俯いて、唇を噛んでいた。
切れそうなほどに噛み締めた唇は、必ず次の日には痛んだ。

全然、楽しくないなら肩書きを返上して。
後悔しているなら告げてくれてもいい。
サヨナラの言葉で、たった一言で終われる。

私がそれを出来ないのを知っているから景吾はそうしないだけ。
悪戯にそんなコトをして楽しんでいるだけ。
笑い話にして、笑い者にして…遠くからチクリ、チクリと針を刺す。
それでも私は肩書きにすがらざるを得ない。
だって…好きという感情は変わらず、嫌いになれないから。
貴方を嫌いになれたならば…どれだけ楽だったでしょう。



もがかなければ水面に浮かべる。
抗いさえしなければ浮かぶことが出来る。
だけど、私は必死でもがいて深く深く溺れていく…
跡部景吾、貴方に……





これ以上、深く溺れぬような手段を取った。
私の心はすでに限界で、ガラガラと音を立てて壊れてゆくばかり。
最後の最後で夢を見れるとしたら…貴方の夢が見たい。
目覚めた時、真っ白な部屋で貴方と一緒にいる夢を…

素敵な夢が見れますように…
そう願いながら、赤く染まった腕を水に浸した。









送信者 跡部景吾

メッセージ
深く溺れるほどに貴方を愛してます。











◆Thank you for material offer Litty&clair
氷帝三年R誕生祭、参加作品



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