LA - テニス
□07-08 PC短編
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戦略があるとすれば…仕掛けられたモノに引っ掛からぬように避けていくこと｡
本気なのか､冗談なのか｡それがわからない以上は乗っかってはならない｡
乗っかり､踏んだものが花火の着火装置と地雷のスイッチとでは大きな違いがある｡
だから避ける｡敏感にも研ぎ澄まされた神経の下､ただひたすらに避けて行く｡
でなければ…私はきっと堕ちていくだろう｡身を滅ぼさんばかりに落下していくだろうから｡
HOME AWAY
日頃から胡散臭いなーとは思ってはいたけど､彼のインテリ気取った眼鏡は伊達だと判明した｡
何故にそんな面倒な代物を日常で使用しているのかは､私は彼じゃないからわからない｡
ただ思うことは…レンズ越しでないと他人を見ることが出来ないのかもしれない､ということ｡
その証拠に､彼は今まで一度たりともその眼鏡を外した姿を見せていない｡
「忍足くん」
「何や？デートの日時でも決めてくれたんか？」
「違う｡向かいにドーンと立ってるせいで､そこの席の人が困ってる」
「あ､ホンマやな｡ほなら､こっちゃ移動させてもらおか」
「そうしてもいいだろうけど､どっちにしても困る人はいると思うけど？」
「せやな…ほなら気合い入れて配置に付くさかい」
わざわざ私の前､横と休み時間ごとに移動しては絶え間なく笑顔を振りまいている｡
どこまでが本気なのか､何がしたいのかもわからない彼の言動｡理解に苦しむ｡
特に反応することもなく私はいつものように本に目を落とす｡邪魔するようなことは彼はしない｡
私に近い場所で彼もまた､私の読んでいる本を眺めているようにも思える｡
だから私も気に留めないようにして読み続ける｡何か反応すれば､それは私の負けを意味する｡
そんな気がするからこそ､彼の出方を見て過ごして…それで時間が過ぎていく｡
彼は私の反応を楽しんでいるフシがあるからこそ､それを阻止してやることに私は楽しみを覚えている｡
「理解不能よ」
「祐希ってば何よ､急に…」
「あれだけ忍足がアピールしてるのに無視しちゃってさ｡ホントは好きなくせに」
親友である彼女だけが知る､私のホントの気持ち｡
ただ､私の思うところだけは理解出来ないらしく､毎日のように姑風味な小言を放つ｡
同調したかように動きたくない､と言えば祐希は溜め息をついて首を振った｡
「何を考えてるのかわからないわ」
「まぁまぁ…今に始まったことじゃないでしょ？」
そう｡今に始まったことじゃない｡私の中にある考えは私にしか理解出来ない暗号のようなもの｡
相手の好意がもし､私の描いたものと違っていたとすれば､それは私の求めるものではない｡
本気なのか､冗談なのか､それが見えない以上は､私も手札を切るわけにはいかない｡
私が本気なのに､彼が冗談の範疇だったならば許せない｡だからこそ引けない｡
「好きだから､譲れないのよ」
――相手の出方を見て動いていく｡HOME AWAYの世界｡
「読むん早いな｡追いつかんわ」
「伊達眼鏡なんかしてるからじゃない？」
「イケズ言わんと､似合うとるやろ？」
「そうね｡妙に似合ってるし､カッコいいと思うよ？」
……笑顔が消えた｡
耳が赤くなっていく様子がハッキリと見てわかるくらいに｡珍しい光景を目の当たりにする｡
いつもの口調で､彼風味な一言のつもりだったのに…少しだけ可笑しくなる｡
「だけど､なんで伊達眼鏡なんかしてるわけ？」
HOMEの中から仕掛ける…私から､初めてのAWAY｡
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