LA - テニス

07-08 PC短編
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---音楽を鳴らす



「じゃあ、この問題は…志月。黒板まで出て解いてみろ」

うーん、うまいこと目を逸らしたつもりだったけど…コレまた逆効果ってヤツね。
前回は確か「目が合ったから志月」って言ったわよね、英語のダサ眼鏡ティーチャー。
その前は確か「下を向いたままの志月」ってご指名を受けた気がするんですけど?
えっと、何をしてても私を指名したいわけですか?こんなにクラスメイツがいる中で…

「百面相してる暇があったら解きなさい」
「は、はあ…」

ちらっと横目で助け舟を求めたら…精市もたちもただ笑っていた。
そう。誰もがにやにやと笑ったまま、この私めを生贄にしてくさりやがった!



不器用姫の日常



「久々に長かったわね、先生の説教」

一時間の授業の三分の一、私は懇々と説教を喰らいました。
問題が何なのか全然聞いておらず、しかも分かっていたとしても解けずに終わりました。
先生は呆れ、諦めなどいう辞書は入っていらっしゃらないようで、延々と説教。
豚に真珠、猫に小判、馬の耳に念仏…こんな素敵な諺があるでしょう?

「大体、ゆいってば、今日は教科書サカサマ」
「前回は確か…生物の教科書広げてたわね」
「その前は――…」

シャラーップ!お黙りなさい!
色々と諸事情込みこみで間違えただけでしょ?そこを指摘しない!
てか、何でそこまで私を観察しておいて誰も注意とかしてくれないわけ?
明らかに皆してグルになってやってるんでしょ?イジメよ、イジメ!
すぐにでも教育委員会に泣きながら訴えて、登校停止の刑にしてやるわよ!

「アンタたちもアイツも、私に何か恨みでもあんの?」

あるか、ないか…そう聞かれたならナイと誰もが口を揃えて言うのに、何なの?この扱い。
授業中は努めて控えめで、目立つことなどしていないはずなのに…何故か、毎度指名を喰らう。
何でやねん!と、当たる度に心で突っ込みを入れてはしぶしぶ答えてるわよ。
それでも出来る範囲は限られてるんですけどね!

「やだな。皆、ゆいが気に入ってるんだよ」
「精市…」
「先生方も贔屓したくなるくらい期待してるんだ……ゆいの動きにね」

それってどういう意味さ!私の頑張りに期待してるならともかく、動きってどういうことよ!
真面目一本…とは確かに言えないし、寝る時は潔く寝て、起こされたら潔く立っておくわよ?
反抗期でもないから教師を困らせるようなことは一切してないし、一応反省だってしてる…つもり。
これだけの潔さがあるっていうのに、何が気に食わないんじゃい!

「そうそう。アンタ期待裏切らないし」
「裏切ったとしても、それもまたをかし」

をかし…趣がある?
全然意味がわかんないわよ!もうちょっと分かりやすく説明してよ!ねえ!
確かに私は信頼も期待も裏切るような真似は致しませんよ、ええ、しないですとも。
だけど、今の言い方は何か違うでしょう?何かこう…私が思っているヤツとは違うでしょう?
まるで新人芸人さんが先輩に無理難題を吹っかけられて、それを無理やりさせられるような…
「それやんないとキミ、売れないよ?」的なこう…ねえ!わかるでしょ?わかるよね!

「私は普通の女子中学生じゃーい!」
「……また突拍子もないコトを」

呆れる友人たちと、ただ微笑みを浮かべている精市…
何よ、私ってばもしかして…やられキャラ?いじられキャラなわけ?
いやいや…私に限ってそんなコトは御座いません。御座いませんことよ?

「いや、そんなトコだよ?ゆい」

のお!精市だけが私の心を読んだ!
さすが、私の精市。だけど、ちと解せん言葉を私にぶつけちゃいませんでした?

「ゆいはやられキャラだって自覚は必要」
「の、のーん!」

私ヤラレちゃう。ヤラレちゃう。ヤラレちゃう。ヤラレちゃう。ヤラレちゃう。ヤラレ――…
い、いかん!何かのネジ飛んだ!てか、私はそんなキャラに成り下がった覚えは一切ナイですから!
てか、そう仕立て上げようとしてるのは他でもない、アンタたちじゃないか!

「わ、私はアンタらのオモチャじゃないやーい!」

捨て台詞を吐いて私、逃走します!
もう人なんて信じられません!もう優しさも信じられません!
精市の全てが大好きだけど…精市すらもう信じられませんから!





「……志月、チャイムが鳴ってから逃走か?」





あ、額に青筋立てたティーチャーに捕まった。
別に授業をフケようなんて考えてなかったのに、滅茶苦茶ティーチャー怒ってる。
ああ…こりゃ説教どころの話じゃ無さそうな雰囲気だわ。てか、助け舟は!
……当然あるはずもなく、私の昼休みはこってり説教喰らいました。



◆Thank you for material offer 煉獄庭園


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