LA - テニス

07-08 PC短編
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不意に、突然に唐突に突拍子もなく、私の友達が彼に尋ねました。
「幸村くんって、この子の何処に惹かれたわけ?」と。
すると、彼はいつもの微笑みで穏やかに質問に答えました。
「退屈はしないでしょ?傍に一台でもあると面白いし…違うかな?」と。
誰もが納得していました。本当に納得の出来る返答だったのかもしれません。
ですが…本人目の前にそんなこと吐いちゃわないで下さい!



不器用姫の彼氏



「私は何?機械なわけ?面白製造ロボッ?」
「いやだな、ゆい。ロボは古いよ、ロボは」
「問題はそこじゃないわよ!」

冷静な態度を崩さず、だけど微笑みも絶やさずに突っ込みを入れてくるなんて…
私より面白製造ロボの素質のある精市だけど、何とまあ…懐柔能力が高いのかしら!
面白いのは私じゃないわ!明らかに精市でしょ?みんな騙されてるんじゃないわよ!

「別に、ゆいの言うロボ扱いなんてしてないよ?」
「うん。ロボより低機能」
「ロボより順応性も低い」
「ロボより耐久性にも優れてない」

ロボロボ言うな!ちょっと私がレトロちっくな古い言葉を使ったか何かは知らないけどね。
しかも、低機能だとか順応性、耐久性が低いだとか言わないでよ!失礼でしょ?否定はしないけどさ!
私は人間!にんげん!確かに機能的にはアナログ走ってるかもしれないけど…人間よ!
そんな一般的な人間にロボ機能を求めない!求めるべからずでしょ!

「ムキーッ!」
「あーあ、オーバーヒートしちゃった」
「手に負えないわね」

こいつら…もう友達でも何でもないわい!
何処まで私を小馬鹿にすれば気がするのかしら!毎度毎度毎度毎度!

「どうするの?幸村くん、この暴走娘」
「うーん…どうしようかな」

ちょっと待って、どうしようかな…って。私は物じゃないわよ?
あっさりサラリと放置なんてかましたら、どうなるかわからないわよ!
蝶のように、鳥のように、飛行機のように、飛び立っても知らないんだか――…

「産廃処理?」

のおおおおおおん!
産廃処理なんかしないで!捨てないで!最後まで使って下さい、お願いですから!
頑張って働きますし、頑張って何でも出来るように努力しますから、捨てないでー!

「あ、産廃じゃなくて可燃ゴミかな?」
「そんな!後生ですから燃やさないでー!」
「あはは」

笑い、笑いですか!笑い事で済む問題ですか!
要らなくなったら新しいのに交換しましょ、な洗濯機か何かですか!

「…ゆいってば、ホントに変わった言葉使うわね」
「辞書機能も古いってコトよ」
「いよいよ廃棄決定」

鬼、揃いも揃って鬼ね!私の周りには鬼しかいないのね!
産廃処理でも可燃処理でも…された暁には夢枕で祟ってやる!
しつこく付き纏って、一生涯忘れられないような存在にしてやるんだから!

「ま、冗談はさておきにして」
「冗談での話かい!」

現実味を帯びすぎた高度な会話を展開してからに…どんだけよ!
夢枕での付き纏い方についても考えたじゃない。それに祟り方も考えたわよ。
むしろ、私を産廃処理したり可燃処理したり出来るのかも考えたじゃない!

「でも、これでゆいが良い理由がわかったでしょ?」
「まあね」
「私たちも同じような理由で友達やってるみたいだし」
「うーん、右に同じかな」

鬼集団だけで自己解決、みたいな終わり方?
何なの…私の発言に関しては特に採用することもないわけ?
どんな扱いよ、私は何のために存在してるわけ?ええ、何なのさー!

「沢山の人に好かれることは良いことだよ」
「精市…」

優しい微笑みで私の頭を撫でて、ね?なんて…
頷くしか出来ないじゃない。本当は否定してやりたい気持ちも満載なのに。
これだから精市はズルイ男なのよ。毎度毎度、アメムチな教育なんかして。
それでも、わかってても、突っ込みすら入れれなくて。

「多少、遊ばれてこそのゆいだよ」

微笑んだまま、頭を撫でながら吐かれた台詞に凍結硬直。
うんうん、と頷く友達たちの姿を目の当たりにして更に目が点状態。
多少とか少々とか、そんな話じゃないでしょ?私の人権はどう尊重されるのさー!

「アンタら、マジモンの鬼じゃー!」

教室中に響く声。振り返った生徒たちは、私の声だと判断すればすぐにスルー。
ああ、これが私の扱いってモンなんだ…と微妙に実感して、だけど奮起は治まらず。
治まらぬ怒りの中、またこんな会話が続けられていく…

「マジモン…また古いわね」
「だから、辞書機能の更新をされては如何ですか?みたいな」
「お客さん、これはもう旧式みたいだから買い替えを薦めますが?」
「俺は旧式が好きだから」




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