LA - テニス

07-08 PC短編
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「今度、ピクニックしようよ。ゆいの手作り弁当持って」

ちょっと待って待って待って下さいな!!!!
爽やかな春風に似た笑顔でサラリと爆弾投下しないで下さいませ〜!!!!
確かに春だし、週末は良い天気でしょう♪ってお天気姉さんが言ってたわ。

でもでもでもでも…
私の指とか無くなっても良いわけッ!!?



不器用姫の死闘



「アッちゃーッ」

油跳ねた油跳ねた。油、跳ねましたよ!!
まだ若い柔肌を傷モンにするつもりかい、こん油!!

「…火事にしないでよ?」

ソコを指摘ですかい、おかーん!!
可愛い娘が火傷しそうな状況下ですよ?
我関せずで傍観決め込むのは止めて、助けて下さいな。ホント。

「手際悪いわね…誰に似たのかしら…」
「おかんのコですがな!!」
「ホラ、オーブンで何かが破裂寸前よ」
「んぎゃーッ」

時、すでに遅し…
食べ物だったハズのモノが産廃(産業廃棄物)へと変貌。
もっくもくとスモークが目に染みるわ。
換気、換気扇のスイッチはどこぞ!!?

「本当に不器用なコねぇ」

いやいやいや…笑い事ではないです。
朝、六時に起床して頑張ってる娘に対して失礼です。
すでに三時間が経過しているじゃないですか!!
どうして時間の流れは早いわけ!!?

「私の時間、カムバーッ」
「……叫んでる場合じゃないんじゃない?」

ごもっともで御座います、マミー。

「幸村くんも変わってるわね」
「ほへ?」
「女の趣味が」

ちょっと! 私の精市をバカにしないでくれる!!?
てか、自分の娘をバカにするなー!!



どうにか、こうにか…我が愛妻弁当完成。
時間は…AM10:30。

「遅刻ーッ」

私、猛ダッシュで部屋に戻る。
パジャマでは出掛けられないでしょ、普通に。
着替え、着替え…って、何着てけば良いの!!?
コレは…前回着たハズだったわよね。
じゃあコレは…?

もう、どうでもいいや!!

私、猛ダッシュで走る、春の空。
うんうん。素敵な句ね、ホント。



「精市!!」
「ゆい。よかった…事故にでも遭ったかと思ったよ」

やんわり笑顔の精市。1時間も遅刻したのに怒ってない。
どこまで寛大な男なんでしょう。

「精市ぃ…」
「ホラ、事故に遭うとゆい、逆ギレしそうじゃない?」

おいおい…んなワケないっしょ!!
怪我して、救急車で運ばれて…逆ギレする元気なんかないわ!!

「はいはい、そんな顔しないの。冗談だから」

クスクス笑う精市の横で私、少し頬を膨らます。
その変な冗談が通じないのが私・志月ゆいですよ。
わかってて吐く精市も精市だけど…

「じゃあ、ピクニック始めようか」

晴れ晴れした空の下、二人で手を繋ぐ。
走ったせいでぐちゃぐちゃになってしまったお弁当に気付くのは…
1時間後のコトだった。




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