LA - テニス

07-08 PC短編
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ちょっと待って待って待って下さいな!!!!
時間の流れってどうしてこうも嫌がらせなカンジなの?
速く進んでみたり、遅く進んでみたり。

どうせ、速く進むんなら…
大っ嫌いな数学の時間にしてよ!!



不器用姫の物語



「アンタ…本当に不器用だね」
「何させても遅いしね…」
「コレ作るのに、足なんて怪我するかぁ?」

気が散るから、だまらっしゃい!!
不器用だろうがトロかろうが、今は相手してられないのよ。
焦って足を怪我して何が悪いっていうの?
別に痛いのは私で、アンタたちじゃないでしょ!!!!

「うっさい。私には時間がないのよ!!」
「余生があと少しだからって焦るな」
「そうそう」
「同感ね」

うきーッ!! 私の余生はあと数日ですかい…って、ホラ見ろ。
完全に編み目が二つも増えてるじゃん!!

「今時、手作りのマフラーねぇ…」
「しかもガター編みで」
「簡単だけど一番、時間が掛かるヤツ」

休み時間の間、コツコツ私が内職しているのが気に入らないの?
毎回、毎回…私の席で私の動きを見張らないでよ!!

「何がしたいのよ、アンタたち!!」

私がそう問い正してみれば…
「応援よ」「確認」「邪魔したい」
それってどうなのよ? ちょっとは控えめにやってよ!!

「大体、幸村くんも変わってるよね」
「手作りのマフラーだなんてね」

ちょっと! 私の精市をバカにしないでくれる!!?
確かにちょっぴりボケで、意味わかんないトコもあるけど。
それでも、私に初めて言ってくれたお願いなのよ。
彼女としては聞いてあげたいトコでしょうが!!

「ゆいが不器用だって想定外だったんじゃない?」
「それはないでしょ?」

……確実に想定内の判断。
私の不器用さは有名ですから。
それでも今回だけは頑張りたいのよ。
2月14日までに手作りマフラーの完成を!!

バレンタイン…昔から夢だったのよ。
チョコ(市販で良し)と手作りプレゼントを渡すのが。
それなのに…ああ、神様。 貴方は残酷主義者。
時間時間時間! 私に時間を下さいな!!

「あ、幸村くん」

えぇ!!? 敵情視察ですかッ?
勘弁して下さい、今はまだコンディションがよろしくないのよ。

「頑張ってるね、ゆい」
「あわわわわ…」

見ないで、見ないで頂戴な!!
現在の進行状態…全くのメドが立たないのよ。
これじゃ、何年掛かるか…全く想像もつきゃしないわ。

「あれ?目が変だね」
「そ、それを言わないで―ッ」
「貸してごらん?」

無理やりに取られた私の製作中のマフラー。
スルスルと解かれて…

「のぉッ!!」

スルスルと最初より長くなった。
今、流行の天○イリュージョン…ですか?
さすがにオーディエンスも黙っちゃいましたよ。

「編み目を緩やかに編むといいよ」

やんわり笑顔でそう言って返してくれて…
あらヤダ。 カッコ良いじゃないですか。
って、ちがーう!!

「精市。アンタ、自分で編めるんじゃん!!」
「編めないなんて言ってないよ?」
「だったら、自分で編みなさいよ!!」
「ゆいに編ませたかったんだよ?」

しれっと言いやがって…もしや、アンタは鬼か!!?

「完成が楽しみだね」



お付き合いを始めて半年…
初めて、彼がサディストだと知りました。




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