LA - テニス

08-09 短編
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2005-2006(PC)
こちらは清純プチシリーズ続編として書きました。



冬。冬はいいよねー。何て言うの?ロマンが飛び交う季節で、何処となく出会いが零れちゃってるカンジ。
物凄く寒いのはちょっとキヨ的にはアレなんだけど、そこをまたうまく利用して――…なんてことも可能なわけで。
嫌でもくっついて歩くカップルたちは絶対利用しちゃってると踏むよ俺は。てか、俺だったら利用する。断言。
寒いから…を利用して手を繋ぐもヨシ。抱き締めちゃうのもヨシ。その流れから…ねえ、ソレもヨシ!!

だ・け・ど、だけどですよ?
もうこの流れは俺の中で定番化しちゃったわけ?って問いたいくらいの素敵な展開。
俺の愛する女神様ったら、やっぱ俺より友達を、先着順位を優先しちゃったんだけどさ!



ない気持ちで…Let's ナンパ!



「クリスマスは当然、俺のために空けてくれてるよね?」って彼氏だったら当然聞くわけで。
そこで「うん…」とか言っちゃうのが可愛い彼女の役割だって考えるのは俺だけの妄想なんだろうか。
しれっとお泊りの準備もしてくれててOK!そのまま俺がお持ち帰りするから!って段取りは出来ていたんだよ?
それなのにゆいってば「毎年恒例のクリスマスは平日の会に参加するの!」みたいな。え?平日の会って何さ。
平日…確かに平日だよクリスマスはね。だけど、恋人たちからすれば素敵に色々便乗出来るイベントだよ?って。
そんな言葉も虚しく、少し切なそうな目で「ごめんね」とか言われちゃった日には「じゃ、来年は予約ね」ってしか言えなくて。

……最後の試合が終わった後、俺のために泣いてくれた彼女は何処へ行ったんだろう。
正直、そのまま手を取って逃走して駆け落ちしちゃっても構わないくらい、ヤバイくらい可愛くてしょうがなかったのに。
てか色んなものが解除されて、もう俺の時間は全部ゆいにあげちゃう!だからゆいの時間を頂戴!な素敵ライフが予定されていたはずなのに。
解除後はそそくさと受験モードに切り替わるなんてキヨ聞いてないよ?それが当たり前とかホント勘弁して下さいな。

と、いうことで。哀れにもフリーな時間を持て余す千石清純くんが出来ることはただ一つ。
可愛い子、美人な子、綺麗なお姉さん、素敵な人妻――…って人妻は良くないけどトライだね。うん、トライだよ!!



「ねえ君!何やってるのかなー?」
「彼と待ち合わせです」

「ねえ彼女!今暇してたり――…」
「しないです。あの人と待ち合わせてますから」

「あ、そこのお姉さーん!」
「連れ待ちよ。他当たって」

「あ、そこの――…」
「ユキちゃん、ほらパパのところに……で、何か御用ですか?」
「い、いえ…失礼しました」


……もう、どーんーだーけー。
見つけられる限りで声掛けて、全員彼氏待ちとか有り得なくないーみたいな。まあ、時期が時期で当然かもしれないけど。
てか、特に最後の人なんて子持ち人妻ですよ。そんな風には見えないくらい若かったんですけど…容姿からもう全てが。
最近多いらしいもんね。若くて結婚する人。だから全然見分けが付かなくなるんだよー綺麗なお姉さんと素敵な人妻の境目がー。


「そこのお――…」
「ママー!!」
「……(こちらは人妻さんね)」

「そこのお姉さーん!」
「何か?」
「……イエ何も(こちらは彼氏付き)」


もう何さ、こんな調子ですよ。何人声掛けても惨敗。何人視線でキャッチしてもその後にリリース。
切ない…切なすぎっしょ!!切ないも通り過ぎたら虚しいになっちゃう。そこまで行ったらキヨ寂しい子になっちゃうじゃん!
少しだけでいいから愛をプリーズ。可哀想な子猫を拾う感覚で俺も拾っちゃって欲しい気分。
だけど、やっぱアレだね…皆見事に隣の恋人しか目が行かないみたいで俺なんか眼中になくって。うんうん…チクショウ。

大体…何でかなーゆいはいつもそう。友達が大好きで、律儀ちゃんだから約束は守る、先着順で、みたいな。
彼氏と友達を天秤で測った時、人数の多さで友達を取っちゃうような…そう、ちょっと俺の周りではあんま見掛けないタイプ。
何ていうの?こう…ちょっとくらい恋人優先でも許されると思わない?「あ、ごめーん。彼氏優先だから」とか言ってもいいと思う。
現にさ、彼女の友達とかはソレするんだよ?だったらイイじゃんって話だけど…頑としてそれをしないゆい。


「……愛、感じない気がする」


ぼそりと街のド真ん中でそう呟いたところで誰も気に留めることはなくて。何か自分の言葉が体に染み入るだけ。
……こういうのってさ、基本的に似合わないキャラなのにな。分かっててこんな気持ちにさせるのはきっとゆいだけだ。

どうしようか。どうしていいか分からなくて取り出した携帯、開いてみても着信もメールもない。
クリスマスは平日の会で楽しんじゃってるのかな?女の子ばっかのパーティって……いいな、それはそれでオイシイけど。
そこの参加者だと思われるゆいの友達に俺嫌われてるしな。便乗参加もきっと、確実に出来ない。

雪が降る。もうナンパなんて余裕もないカンジ。
成功率も昔から比べたら低いし、何かこんな季節だから失敗すればするほど心のリスクの方が大きいし。
夏は別だよ?夏は情熱、暑さと共に燃えるものがあるからね。失敗も成功のうちだって胸張って堂々と出来るし。
薄着、水着…生足!!この興奮は今にはないものがあるね!いや、今の季節のミニスカブーツにも惹かれはするけどさ!

あーあ、と溜め息吐きながら帰路に着こうとした時、さっきまで眺めていた携帯が急に音を出す。
この着信音は……そう、俺の唯一の女神様の音楽!(アクエリオン、サビ部分が基本っしょ!)

「もしもーし」
『あ、清純?今電話――…』
「大丈夫!で、どうしたの?」

予定が空いたの?少しでも気になって掛けてくれたの?

『うーんとね…皆がさ、クリスマスなのに放置でいいの?とか言ってまして…』
「うんうん」
『もし、清純が嫌じゃなかったら…ウチでやってるから…』


――来ないかな?って。来れるなら来て欲しいな。


当然、その電話を切った途端に走り出す。彼女からそんな言葉を貰った日には走らずには居られない。
帰路に付き始めていた足の方向を180度変えて、本当に有り得ないくらい全力で走る。体力テストでもこんなに真剣になったことはない。
彼女の家に行けば少し蔑ろにされるかもしれないのは分かってる。少しだけ疎外感を感じるだろうなーとも思ってる。
だけど、それでも、こんな日なんだ。やっぱ会いたいのは彼女で、傍に居たいのも彼女だけなんだって…こんな自分、有り得ない。
有り得ないけど…それが事実。それが全てで…だから走って走って走って走って――…

雪が微妙に視界を遮る中で辿り着いた先、コートを着込んだゆいが玄関先に立ってるのが見えた。
馬鹿…だね。もし、俺が歩いて来てたら…どうするつもりだったんだろ。中に居ても良かったのに…

「ゆい!」
「え?き、清純?」
「中で待ってて良かったのに…」
「ええ?嘘、早く、ない?」
「うーん、どうだろ。でも走って来ちゃった」

会いたかったからって言うつもりだった。誰が何処で見ていても構わないから言うつもりだった。だけど…

「ほーら言ったじゃん!通話終了後、5分内だってー」
「罰ゲームの罰ゲーム確定ー」

窓から降ってくるのは雪だけじゃなくて、言葉の槍もグッサーグッサー俺を貫いた。
……罰ゲームで電話掛けて来て、ついでもって更に俺のタイムを賭けて…ゆいが罰ゲームなわけね。

「……」
「……怒った?」
「……ヘコんだ」

何度も「ごめん」と手を合わせるゆいだけど、その表情は俺とは裏腹に明るいもので何だか楽しそうで。
うーん…純情な男心を軽々と弄んだ後の謝罪には当然見えなくって。でも怒れない。でもマジヘコみはする。

「でもさ、会いたかったのも事実だから…来てくれて有難う」

笑顔と温かな言葉と近付く唇と。もしかして…!なんて期待をしてみれば彼女の唇は見事に期待を裏切って耳元へ。
「大好きだよ」って響いたから…色んなものがごっちゃりな心境だったけど、俺も笑顔になって彼女にこう言うんだ。

――俺の心をこんなに動かせるのは、絶対にゆいだけだ。と。





-切ない気持ちで…Let's ナンパ!-
クリスマス企画2008、第七作目。
リクエスト頂いた名月様へ捧げさせて頂きます。有難う御座いました(090105)

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