LA - テニス

08-09 短編
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「いい加減ベタベタするのは止めて」

何でなん。ちゅうか、これで俺は疲れを取っとるの。
って、彼女に言うたら思いっきし…ではないけど鳩尾に肘入れられた。


今日は出勤早々ドタバタした俺。そん時からなーんか嫌な予感はあった。
そういうんあるやろ?絶対ようないことがあるっちゅう予感。
外れてくれれば良かったんやけど…ドタバタが勤務時間内ずーっと続いてくさりおって。
しかも婦長さんがご丁寧にオペまで入れてくれとってん。
お陰で集中力もやる気も何もかんもゼロ。気力で何とか動けたけど。
ほんで疲れ取るために彼女にくっつけば…この仕打ちや。

「もう、ずっとくっついてるじゃない。そんなことしてないで寝なさいよ」
「嫌や。寝たくらいじゃ疲れ取れへんもん」
「もん、じゃないし!」
「ええやんか。こうしとるのが俺のリラックスタイムやん」
「知らないわよ」

はいはい、と言わんばかりに向こう行け言う彼女は冷たい子やと思います…
未来の旦那様やで俺。そないな扱いせんと甘やかしてくれてええと思うんやけど。

「奥さんが冷たいー」
「まだ奥さんじゃないし」
「嫌でも奥さんになるやん」
「嫌でも、とは思ってないけど…まだ奥さんじゃないし」
「そないな細かいこと言わんと、ぎゅーってさせえや」

でないと疲れが取れん、と大人げなく駄々を捏ねれば彼女は溜め息を吐いた。
うん、こないな溜め息は彼女が観念した時に吐かれるんやて俺は知っとる。

「……疲れ、引き摺っても知らないんだから」
「何言うとるん。こうすんのが一番の癒しや」

そう断言したるわ。疲れとかどんどんこれで減ってくんや。
でも彼女は納得出来へんらしく「変なの」とまた溜め息を吐いて。
せやけど今度は大人しゅう抱き締められて俺の頭を撫でてくれた。

これが一番の薬。一番の安定剤。これが一番の特効薬。
大事な子に力を貰うんが俺にとって大事なことなんや。



-価値観-
侑士編(090304)


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