LA - テニス

08-09 短編
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ああ、まただ。
こんなことが何度も何度も続くものかと互いにいつも苦笑するんだ。


本を買えば同じものが必ず2冊になり、CDを買っても同じことになる。
そうかといってたまに褒美にケーキなんかを買ってみても、同じようなものが同じ場所に並ぶ。
今日も…牛乳と卵が無くなっていたことに気付いたから買って帰ればまた、だ。

「あ…また同じ」
「マジかよ。てか賞味期限は…」
「うん、バッチリ同じ」

買った先は違えども買って来たものはまるっきし同じで賞味期限まで同じ。
少しだけ予感はしてたんだ。またそうなるんじゃないか?って予感。
だけど、過去に何度かそれで踏み止まって買わなかった日には互いがそうだった経験もある。
その時は慌てて二人で近くのスーパーまで走ったんだけな。

「ここまで来るとすげーな」
「そうだね。やっぱ連絡するべきだったかな」
「おー俺も考えたんだけどよ。まさかって思うだろ」
「そうそう。私も同じ」

長い付き合いの中、同じことを何度も繰り返しておきながら俺たちは変わらない。
それが自然体でありのままで、物凄く居心地が良くて気楽で、のんびりと楽しくて。

「あーでもどうすっかなコレ」
「んー…とりあえずシチューとスコッチエッグにでもしちゃおうか」
「それで少しは減るのか?」
「まあ…大丈夫でしょ」

笑ってキッチンへと向かう彼女の横、俺も並んで手伝いをする。
傍に居れば作業分担をするから同じことをすることはなくて。
作業効率は悪くない。だけど食材は2倍。
こんな光景に俺は何度も笑って、それでも何故か落ち着きを感じるんだ。

「これからは連絡取ってから買うか」
「うん。そうしようか」

笑う俺たちの指には同じものがやっぱり光っている。
こんな雰囲気をそのままずっと、これからも保てたならば幸せだろうか。
いや、幸せになる。そう思っているから春、俺たちは一緒になる。



-価値観-
宍戸編(090305)


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