LA - テニス

07-08 携帯短編
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日向ぼっこ
屋上の貯水タンクの上、ゴロンと寝転んで空を眺めるのが好きで。
常にゴロゴロ日向ぼっこばかりしてりゃ、そのうちに猫になるんじゃないか。
それくらいこの場所も大好きで、ちょくちょくお世話になってたら習慣付いた。
授業放っぽってこの場所に居付いて、うん、出来れば猫になりたいくらい。

「ゆい」
「あ、亮」
「てめえ、次は先生に説教じゃ済まねえぞ」

のーんびりまったり。それを最近邪魔するのが仲間になりつつある宍戸亮。
何だかんだで同じ場所での出没率が高くて、注意ばっかするくせにやっぱり仲間で。
空いたスペース、同じようにゴロンと寝転がって天を仰ぐんだ、彼も。

「そん時はそん時で言い訳はしないさ」
「言い訳くらい考えとけよ」
「ソレ逆鱗に触れるし」

最近の先生ってアレ。体罰出来ない分、言葉の暴力が酷い人もいるんだよ。
色々と引き合いに出しては棚に上げちゃって、最終的には「ロクでもない大人になる」って言う。
いやね、確かにそれは間違っていない気もするんだけど…今は何となくこうしていたいんだよ。
現実逃避じゃないよ。教室が怖いとかイジメとかそんなんじゃなくて、何か…ゆっくりしたい。
セカセカしたのは好きじゃなくて、マイペースな私には沢山の強要は自分を潰す。
押し潰されたくないから、少しずつ前進させて欲しい気もするわけで。

「皆のマイペースってさー」
「あ?」
「私からすればハイペースだよ」

エンジン掛かりっぱなしの車みたいで、常にアクセルは全開でセルが回りっぱなし。
たまには速度落とせば楽になるのに…車自体が無理しちゃってるような…そんなカンジ。
それを亮に説明するんだけど、微妙に反応が悪いのは例えが微妙だかららしかった。

「……地味に例えが難しいのな」
「そうかな?」
「でもよ、まあ…いいんじゃね?」
「何が?」

太陽がサンサンと照らす屋上には、それ相応に涼しい風が吹いて心地いい。
空を徘徊する白い雲は色んなカタチを形成しながらどんどん流れていって羨ましい。
そんなことを考えながら隣の亮が何が言いたいのか、耳だけ傾けた状態でスタンバイする私。
地味に眠気が襲ってくる。地味に空に飲み込まれそうな勢い。それでも懸命に目を擦る。

「自分のペースで生きるのもいいだろ」
「んー」
「俺はそんなとこ好きだぜ。羨ましいよ」

羨ましいとか、そんな感覚が亮にあるのが意外だと思った。
マイペースよりもハイペース、それが彼のイメージであって実際のとこかなりの頑張り屋さんで。
んー時には肩の力とか抜きたくなるんだろうか。張り詰めてばっかも疲れるだろうし。
そう、私から見れば皆は肩に力が入りすぎたロボットみたいにも見える。ガチガチしててキツそう。
ほんの少し、ちょっとでいいから力を抜いたら楽になることだってあるのにね。

「てかさ」
「あ?」
「今の告白みたいだったよ」

横目でチラリと亮を見つめて笑いながら言ってやれば、物凄く慌てて否定するのが笑えた。
「そんなんじゃねえよバーカ」だって。まるで、犬の遠吠えみたくなってて面白かったりする。
ちょっと冗談吐いただけなのに、全力で慌てる亮に落ち着くよう指示すればヒートアップする。

「どうどう、落ち着きなよ」
「俺は馬じゃねえし!」
「そんなん分かってるし」

たまにこうやって声を上げて笑うことはイイコト。声を上げることも悪くない。
思いっきり休憩することも悪くないし、マイペースでも自分らしくあればいいんだ。

「さーて、授業出るか」
「は?サボらねえのか?」
「うん。マイペースに授業も受けることにするよ」

本当は日向ぼっこしたい気持ちもあったけど、気まぐれに授業に出たい気分になった。
いや、それが学生の本分ではあるところなんだけど、根詰めたらガチガチになってまた嫌になるかもしれない。
だからマイペースに拘束されて、マイペースに話を聞いて、授業に専念してみようと思う。

「ほら、亮も行くぞ」
「お…おう」

屋上の貯水タンクの上、ゴロンと寝転んでいた体を起こしてボロのハシゴを降りていく。
きっとまた此処に来るとは思うけど、その時はまた充電なんかさせてくれたら嬉しいなと思う今日この頃。



END
友達以上、恋人未満な二人。
マイペースがテーマ。



(080611)
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