LA - テニス

07-08 携帯短編
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問題はそこなんだ



「……と言うと?」
「俺は敢えて妥協して恋愛映画にしようって言ってるのに…」
「彼女は日吉に合わせてホラー映画にするって?」
「そうだ。アイツ、俺に合わせようとするんだ」

……結局、日吉の惚気話か。
何か最近はこんな展開が多いなーとは思ってた。普段、愛想の無い日吉がやけに寄ってくる理由は…付き合い始めた彼女のことばかり。不器用なんだよ日吉が。イチイチ気にしてばかりで全然前とか進んでないカンジがする。しかも、自分が主導権を握ってないと気が済まないのか、彼女の動向が物凄く気になるとか。俺からすれば…そんなの気にしてたらキリがないと思うんだけど。

「……それの何が気に入らないんだよ」
「俺が敢えて、妥協までして、それなのに…」
「いや、もうそこはいいから」

日吉が敢えて彼女のためにする。それで妥協して彼女に合わせる。その言い分だけはきちんと分かった。理解は出来ないけど分かった。十二分に。そういうのじゃなくて、もっとこう本題に突入して欲しいんだけど。要は自分が合わせたいって言いたいのか、彼女に合わせられるのが嫌だって言いたいのか。どのみち、俺にはよく理解出来ないことではあることだけ告げておくけど。
妥協だとか合わせるだとか、そんな付き合いしてたらお互い無理してやってらんないと思う。どうしたらそんな風な物事の考え方になるのか俺には理解出来ないし、そこまで意味の分からないことを考えている日吉自身も理解出来ない。不器用、で済ませれる範囲なのか…後で宍戸さんに聞いてみようか。

「何?結局は何なの?」
「……たい」
「はあ?」

語尾しか聞き取れないくらい小さな声で何かを主張。当然、聞こえないものは聞こえないからもう一度言うよう催促してみれば、何とも言えない表情を浮かべてる。結構珍しいと思う。日吉がそんな顔をするなんて。

「聞き取れないんだけど」
「……くそ鳳」
「……別に俺は日吉の相談話聞かなくてもいいけど?」

何か恥ずかしいことでも言ったのか?むしろ、自分の思っていることを言うことが恥ずかしいのか?何にせよ、俺にとってどうでもいい惚気的な相談話を持ち掛けて来た時点で恥は捨てとけって話で。うーん…日吉の彼女も色々と大変だよな。不器用すぎて話を聞く方も大変だっていうのに… ソレに付き合っていくっていうのはもっと大変だろうに。
それを考えたら日吉は贅沢者。そこに愛されてる証拠だと思うべきだと思うな。

「で、何を言おうとしたわけ?」
「……」
「今度は語尾しか聞こえないような声で言うなよ」

前以って日吉にはそう釘を刺しておいて…
俺を見ては目を逸らし、見ては逸らし。色んな場所に目を泳がせている日吉は結構いっぱいいっぱいらしい。しばらくすると決意したのか、変に二回頷いて目を逸らしたままで重い口を開く。顔を少し赤らめて、らしくない姿で。

「……笑った顔とか」
「とか?」
「……嬉しそうな顔」
「うん」
「……見たくて、合わせ、たい、とか」

頼むから顔を真っ赤にして俯いて言わないでくれ。
何気にクラスの女子が俺たちを気にしつつ遠巻きになってる。むしろ、それならそれでソコを俺じゃなくて彼女に言えばいいのに…そしたら納得するでしょ。何処まで不器用なヤツなのか…やっぱり俺には理解出来ないな。俺だったら彼女を納得させるだけの言葉は自分で持ってると思う。日吉だって素直になれさえすれば言えるだろうに。

「……馬鹿馬鹿しい」
「な!」
「そう思うなら彼女にそう言って来いよ」

シッシッ、と手払いすれば日吉は凄い形相で教室から去ってった。多分…彼女のクラスへと行くんだろうと思っておく。意外と真面目だから俺の言うことを聞いて、自分の中の本心を告げるんだろう。
なーんか聞いてドッと疲れるような…自分が馬鹿らしくなるような日吉の話。少しだけ羨ましくも思えた。結局のところは日吉も彼女もお互いを想ってるって話になるんだろうから。でも、正直に言えばそんなの自分たちで解決して下さいって。
悔しいから俺も早いとこ心から好きだと思える人を捜そうと思う。



御題配布元 CouleuR この言葉から始める5のお題「問題はそこなんだ」

鳳目線で日吉夢。日吉、想いを語る。
何だかんだで仲良しさんだと思われます(080315)


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