LA - テニス

07-08 携帯短編
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可愛くなんてないよ



どんな習慣なのか私にはさっぱり分からない。いや、他人の習慣だからっていうのもあるとは思うけど、それでも意味の分からない習慣で。何度も何度も聞いてはみるけど…その答えもまたさっぱり分からないことだったりで。頭を悩ます。他人の習慣に頭を悩ます必要はないはずなのに、頭を悩ませてるんだ。

「……あのさ」
「んー?」

意味不明な習慣の持ち主に声を掛ければ返答はそれだけ。で、相変わらずその彼の習慣とやらに関する行動も続行されていて、結構視線は痛い。自覚がなくての行動ならばいい…ってわけでもないけど、自覚あっての行動だから究明したい。究明する理由、回避したいから。身に降り掛かっている彼の習慣とやらを回避したいから。そう、目の前で日々の習慣とやらをする彼は…私を使っての習慣を行うんです。

「なんで撫でるかな」
「別にええじゃろ。減るもんじゃないし」
「いや…減る減らないに関わらず視線が…」
「気にするからいかんのじゃ」

そういう問題ではなさげですが?
あたかも私の感覚がおかしいみたいな言い方をしないで欲しいんですけど。仁王くんは自分がどれだけの人気があって、どれだけの視線を集めて、どれだけのラブコールを受けているのか、分からないんだろうか。あ、ラブコールは受けてるんだから分かるか。まあ…それはさておき。そんな人がコールもしてない私とかの頭を日々撫でると怖いんですよ。もう後輩やら同級生やら…下手したら高等部のお姉様方まで睨んでくるんですよ。今のところは特にアクションはないけど、あった日には原形留めぬ顔になりそうで怖いわけですよ。女の恨みは本当に怖いから。何でもし兼ねないから。現に…そろそろ限界っぽいし。
その辺を踏まえた上で行動に至るのなら…もう人じゃないと思う。

「気にするもしないもなくないですか?」
「何が」
「この視線…痛くないですか?」
「全然」

感覚が麻痺しているようです。
明らかにクラス中の女子の視線が此処に集まって、移動中の女子生徒たちが「またやってる」と言わんばかりの表情で見てて。確実に視線は此処ですよ、此処。途中、どれたけ払い除けても意味がなくて断念したけど、こんな視線を集めたんじゃ…また払わざるを得ないくらいの視線ですよ。怖くて堪らないのが分からないのか。撫でやすいのか何かは分からないけど、本当に止めて欲しいと思うんですよ。ねえ、分かってくれませんか?頭に引っ掛かった蜘蛛の巣を払うかのように仁王くんの手を払っても…また頭に手が置かれます。肘置きっぽい…とか思うとげんなりしてみたり。

「何じゃ、撫でるの止めろて言うんか?」

「はい」と強く言うことは出来ないけど、とりあえず意思表示で大きく頷く。
いや、意味もなく撫でること自体がアレですよ。セクハラ。こうして欲しいっていう人が山ほどいるんで… 出来たらそちらでして頂けると助かるのですが…とは、これまた言えない私はどうなんだろう。

「嫌じゃ」
「……そう言われても、ね」
「撫でられるのは嫌なんか?」

小首を傾げて覗き込むように顔を見られて…いや、あの…ねえ、こ、こういう場合、どう対処していいものかワタワタするのですが!しかもアレです。顔が近…肌綺麗、とか、それくらいの近さなんですが!
こくんって首が曲がった状態で顔覗き込んで来て、そのまま無言、寂しそうな表情、でも頭には手を置いたまま。な、んと言えばいいのか。いや、別に頭を撫でられることに対しての嫌悪と言うか、そんなのはないんですが。でもこう…必要以上にこう…撫でられると視線も脚光も浴びて…痛い、わけでして…!

「嫌、なんじゃろか」
「いや、あの…」

ビシッ!と言える人が羨ましい。
そんなことを頭で考えながらも兎に角、見て分かるくらいにオロついてたら… 彼の後方、見兼ねた柳生くんが「仁王くん」と彼の行動を制止してくれた。

「んー?何じゃい」
「彼女が気になるのは分かりますが、制御してあげないと可哀想ですよ」
「気になるのレベルじゃないくらいお前さんなら分かるじゃろ」

や、柳生くん!そこで引き下がらないで下さい!
「反応が可愛いコイツが悪いぜよ」とか何とか言ってまた頭を撫で出して…あわわ、柳生くんが本格的に退いていく!何か助言を諦めて引き下がっていくのは何故ですか!助け舟が中途半端に出されて、私がその船に乗る前に撤収されてくような…

「オロオロしとるトコが可愛いのう」
「か、可愛く…!」

否定の言葉を吐こうと上を向けば、物凄く近くに仁王くんの顔があって。ちゅって軽く響くくらいの音を頬で感じた。ちゅっ、ちゅってしたんですが!

「そんな反応するからツボるんじゃろな」

……と、ワケのわからない理由を押し付けられて、また彼は頭を撫で出した。



御題配布元 CouleuR 可愛い人5のお題「可愛くなんてないよ」

ん?何を書きたかったのか分からなくなった。
とりあえず頭を撫でられるヒロインを書いておく、と(080409)


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