LA - テニス

07-08 携帯短編
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耳まで真っ赤



不器用な人っていうのは基本的にからかいやすいって思うのは私だけだろうか。思わず口元に手を当てて笑ってしまってる理由は目の前にいる宍戸をいつものようにからかった所為。いやー宍戸ってば本当に不器用さんで、すーぐ人の言うことを間に受けちゃって可愛いと思う。異性を可愛いって思うなんざどうかしてるような気もするけど、宍戸は稀にないくらい可愛いと思います。

「お、前…!」
「うわー耳まで真っ赤」

予想通りの反応ですこと。
何か最近、私の仲間内で流行っているゲームがあって、それを恥ずかしげもなく宍戸に試してみた。単に反応が見たくて。絶対、いい反応をしてくれると信じて。そしたら案の定、この上ないくらい素敵な反応をしてくれた。ま…コレやられて無反応であってもアレなんですが。
宍戸に了承を得て、耳元に口を寄せて…「愛してるよ」の一言。
何かのテレビ番組であった企画っぽいものの真似っこ。それが私たちの現在の流行。馬鹿っぽいんだけど、これが結構笑えるんだよ。言う方も言われる方も何だかんだで照れるし。

「宍戸なら絶対にイイ反応すると思った」
「ばっかじゃねえのかお前!」
「馬鹿で結構。面白ければ何でもいいし」

コレ、例えばジロちゃんとかにしても別に平気そうに笑うだろうし、彼自身、ちょっと博愛ちっくだから… 「俺も愛してるCー」とか言っちゃいそうで面白い結果は得られないと判断したわけで。宍戸だからやれたわけで…その選抜にむしろ「グッチョイス!」くらい言ってくれてもいいと思う。言わないとは思うけどさ。

「ははーん、真に受けちゃった?」
「う、受けるかよ!」
「その割には至るところ真っ赤だよ」
「うっせえ!あ、暑いんだよ教室が!」

……それはないだろ。
暦の上では春かもしれないけど、まだまだ冬の厳しさの残る時期ですよ。それなのに教室が暑いとか有り得ないし、そんなこと言っちゃ病人だよ病人。その宍戸、今にも教室の窓を開け兼ねないくらいの勢いで下敷きを扇いでる。その余波が微妙に私のとこにまで届いて寒いんですけど…

「純情ボーイだね宍戸は」

それがまた可愛いと言えば、宍戸ってば更に真っ赤になって何か反論しているけど言葉になってない。多分、否定の言葉を一生懸命吐いてるんだろうけど逆効果だってことに気付いてない辺りがまた可愛いと思う。あっさり聞き流すとか、しれっと受け流すとか出来ないのかね。いや…出来ないから宍戸亮と言うのだろうか。何でもサックリ聞いちゃう宍戸だから宍戸である。うん、コレは名言になるわ多分。

「調子、乗んなよ…!」

ふふーん、みたいな表情を浮かべて上から目線を送ってれば宍戸がプチ切れしてる。そんな反応するから益々調子に乗っちゃうのがまだ分からないらしい。予想以上に、想像以上に過剰反応を示す… それがまた面白くて笑ってたら、宍戸、反撃に出た。

「……っ」
「……ほれ見ろ、お前も同じ反応してんじゃん」

火、至るところから吹くかと思った。
どんどん体温が上昇していくのが分かる。どんどん顔が熱くなるのが分かる。嫌でも顔も耳も熱持って、宍戸と同じ色をしてく自分が分かって…思わず口元に手を当てた。

「真に、受けたのかよ」
「う、受けないわよ!」
「そこは受けとけ」

……て、何さソレ。
そう言いたい気持ちよりも言葉を理解してしまったことの方が上を行って頭真っ白。顔はきっと宍戸と同じくらい真っ赤なはずなのに、頭の中は真っ白になって言葉も出ない。
……こんなに危険極まりないゲームだったのか?
口元を押さえたまま、硬直状態で見る宍戸の顔はやっぱり真っ赤で。ハタから見れば「何だ?この二人」な状況に陥っているとは思うけど…どちらも動けないでいる。連鎖反応、相乗効果。どんどん体温が上がっていくから、私も宍戸の真似して下敷きで自分を扇いでみたり。

「……な、教室暑いだろうが」
「……そだね」

二人で扇ぐ下敷き。微妙な風が自分の顔の熱を下げてくれたならそれでいい。そう思って扇ぐけど効果はなかなか出てくれないことをしばらくして知る。
不器用宍戸が囁いた言葉、それは真実なのだろうか。

――俺の方が愛してる。



御題配布元 CouleuR 可愛い人5のお題「耳まで真っ赤」

妹(小6)のクラスで大流行。
「愛してるよゲーム」って…ベタネーミング。
話聞いた時、思わず吹いた(080229)


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