LA - テニス

07-08 携帯短編
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寂しがり



「なあ、今日一緒帰ろーにー」

今の台詞、もう5回目です。
訳分かんない語尾を伸ばしつつ私の肩に乗っかかるのは止めて下さい。お陰様で無駄に肩と腰と腹筋に力が入ってしまって明日筋肉痛になってしまいそうです。つーか、お前の所為で教室の出口から一歩も出られん。目の前に扉があるっていうのに外に出れないってどういうことよ。私はちゃっちゃと帰って昔のドラマ(再放送)とか見たいんですけど。とりあえず退いてくれ。とりあえず離れてくれ。

「だーかーらー」
「家帰ってもオモロないやろー?」
「ドラマ観るって言ってんじゃん」
「どーせ再放送なんやろ。観てもしゃーないやん」

それはお前だけの見解じゃろが!
何があったんか知らないけど今日はやけに、必要以上に忍足がしつこいです。まるで油のようにベタベタしてて、納豆のようにネバネバしてます。それだけならまだしも、まだ掛けるんか全体重!重くて敵わないんじゃい!ただでさえ腰は冷えて痛いのに…負担掛けるような真似するでない。女性の腰ってのはなー弱いんじゃ。脆いんじゃ。デリケートなんじゃ。寒さにはベラボウに弱いんじゃい。

「オモロイかオモロくないかは私が決めるから。じゃ」
「そないな冷たいこと言わんでーな」

言うし。私は早く帰りたい。
一体、何があってここまで気持ち悪いモンになったんだろうか… いや、いつも結構気持ち悪さのある男なんだけども今日は輪を掛けて酷いわ。ポーカフェイス忍足、天才忍足、千技忍足の異名が泣くわ。最後のはあんま関係ないけど。とにかく親衛隊が泣くから止めてくれ。ついでに今の時期になってイジメとかも勘弁だから止めろ。もう卒業間近でアレだから穏便に生きてたい。頼む、帰らせれ。
そう、何度も何度も同じことだけを繰り返し言ってるにも関わらず、忍足は離す気配はゼロで…むしろ逆効果なまでに後ろに重心が掛かる。横転しろと仰せで御座いますか?それもまた勘弁なんですが。

「今日は寒いからマジで寄り道するつもりないんだってば」
「嫌ーや。俺遊んでもらうんやもん」
「可愛い子ぶって言うな」

……軽く肘鉄かました方がいいのか?
ベタベタ、ネバネバ…確かに背中は暖かくなって悪くはないんだけど邪魔ですから。私は帰ってドラマ観るって言ってんだから邪魔する権利とか忍足にないし。もういっそ諦めて別の子誘うなり、相方の向日とゲーセン行くなりすればいいと思う。それが嫌ならジロちゃんと昼寝、それが嫌なら宍戸とビリヤード、それが嫌なら後輩たちとテニスしとけよ。私は帰りたい。ただそれだけなんです、今の時間ってのは。

「なあ、一緒帰ろーにー」
「だーかーらー」
「今日寒いから一緒におりたいねん」
「……他の子に頼んで下さい」

何度、この会話を繰り返せは良いのだろうか…

「他の子じゃあかんねん」
「私は忍足があかんねん」
「……何でやの」
「うっとおしいから」

ドきっぱり言い退けたら更に重みが増加…っていうか何?
重いっていうよりも…何だろう首に思いっきり絞めるような痛みが走っているのですが。も、もしや、死ねと仰せで御座いますか?忍足なんざに賭ける命など持ち合わせてないよ私。親孝行だって未だしてない十代に死ぬとか勘弁です。いや、もうマジで。

「おしたり…苦し…」
「うっとおしゅうなってもしゃーないやん」
「開き…直るな」
「寒いし、冬やし、寂しなるに決まっとるやん」

いや…意味分からんよ。

「せやから好きな子とおりたくなるんやん」

いや…そんな理由もいいから退いてくれ。
多分、これが初めて受ける告白なんだろうけど…それどころじゃない。ダメだ。もう意識飛ぶ。



御題配布元 CouleuR 可愛い人5のお題「寂しがり」
ものふぉびあ、洸遙さんへ捧げます。

パソサイトで相互リンクして下さった洸遙さんへ捧ぐ。
寒いと寂しいとかぬかしそうな忍足にて(080228)


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