LA - テニス

07-08 携帯短編
38ページ/80ページ


……平古場くん、後でゴーヤですよ。
いや、この場合は平古場くんだけの所業ではないようですね。
影には甲斐くん、知念くんも関わってると踏みました。
連帯責任、この言葉通り全員にゴーヤ食わせますからね。

「……さて」

俺はどうすべきなんでしょうね。この場合。
放っておくには少し居た堪れないというか、無防備というか…
確かにココはエアコンも効いて涼しいですが、放置するわけにもいかないでしょう。
しかも、このままでは間違いなくバランスを崩して落ちかねませんし。

「志月さん、そろそろ起きなさいよ」

図書室の隅、一番の奥のテーブルに腰掛けて窓にもたれた彼女。
呼んでも反応しないということは、結構眠りが深いようですね。
どこまで油断しているのでしょう…人目に付かないと思っているのでしょうか。
浅はかな。現に見つかっているのですよ。平古場くんたちに。

「早く起きなさい。ホラ!」
「……も、ダメポ」
「ダメポ?何ですか、それは…」

完全に寝惚けてしまって何を言っているのかわかりません。
微妙に眉間にシワが寄り始めていますし、嫌な夢でも見ているのでしょうか。
それにしても、本当によくこの体勢のままで寝ていられますね…
首の傾き具合からすれば、寝違いを起こしかねませんよ。

「早く起きないとゴーヤ食わすよ」
「む…ムリポ…」
「また意味のわからぬことを…」

どう足掻いても今すぐに起きる様子はない。
だけど徐々に眠りが浅くなっているのか、夢を見ているようだ。
閉じられた瞼が少しだけ動いている。表情が少しずつ変化している。
覚醒するまで、あと僅か…というとこでしょうか。

「仕方ないですね…」

彼女自身が覚醒するまで待ちましょう。
本来ならば、俺がここまですることはありませんが…他でもない貴女ですから。
誰か別の人に何かされたら困りますし、それ以上に許せませんし。
だから、この大役を甘んじて受けて差し上げましょう。

君を守るために、君を誰かに盗られぬように。
君の寝顔を誰にも見られぬように…て、少なくとも平古場くんは見てますね。
むしろ、何故彼女がココに居ると知り、俺をわざわざ送り込んだのか…
尋ねる必要がありますね。そして、後でゴーヤ食わせます。





初の木手氏夢。明らかなる片想い。
彼はとりあえず、ゴーヤを誰かに食わせたい人らしい。

-浅い夢-
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ