LA - テニス

07-08 携帯短編
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「宍戸」
「あ?何だよ」
「ほれ、プレゼント」

うッ、不意打ちか?やべ…ちょっと嬉しいかもしんねえ。
まさか…志月から貰えるとは思ってもなかったから。
例えそれが愛想もなく無造作に置かれたラッピングもないものでも。
待てよ。コレは跡部とかの差し金でもねえよな?
何かの罰ゲームとかちょっとしたドッキリとかでもねえよな?

「お、おう…サンキュ」
「役立てて」
「あ、開けてもいいか?」

どうぞ、と言わんばかりに志月が頷いたから開けた。
丁寧に…というわけでもねえが開けて、取り出して…見た。



返品可能



――ガタッ!バサバサバサッ!
すぐ隠した。すぐさま片付けた。元通り、きっちり袋の口も閉じた。
一瞬、何処か遠くへ飛び立ちそうだったぞ。俺の心が。
な、何だったんだ…夢か?コレは夢なのか?

「な、な、な…」
「喜んだ?」

何処までポーカフェイスなんだ?コイツ…冷静に俺を見やがって。
てか、何だったんだ今の!学校だぞ?教室だぞ?
プレゼント…プレゼントなのかコレ!プレゼントとして見なされるのか?
頭の中は真っ白で、だけど延々と同じメッセージが流れる。
耳にしたCMソングがずっと流れる原理と一緒だな、こりゃ。やべえよ。
何だったんだ?一体、このプレゼントは――…

「そんなに喜んでくれるとは…」
「ち、ち、ち…」
「やっぱこんなのを欲しがるんだ」

いやな、俺も男だ。敢えてその辺は否定してもしょうがないと思う。
興味がねえとは言い張ることは出来ないし、誤解も生みかねないだろ。
ただでさえ、長太郎と仲がイイとかで誤解されてる節もある。
そこは強く否定したいところだ。ああ、それはそれで否定したいところだ。
だけど、だけどだな。お前、コレは…俺、どうしたらいいんだ?

「宍戸も男だね――…」
「問題はそこじゃねえだろ!」

ちょっと好きな子から突然、プレゼント貰って浮かれたさ。浮かれたよ。
ヤバイ、コイツも俺のこと想っててくれたんだ…くらいの夢は見た。
それがあまりにも淡くて儚くて…いっそ、夢だった方が良かったくらいだ!

「お前、中身が、コレ、どういう…」
「句読点多すぎ。センスいいでしょ?」
「センス…これがセンスっていうのかよ!」
「結構使えると思うんだけど?このエ○ゲ――…」

思わず手で塞ぐことで回避した。当然回避だろ。
馬鹿か!教室でそんな単語出すな!休み時間だぞ、休み時間!
クラスメイトがゴロついてる教室で普通に「エ○ゲー」なんて単語出すな!
まるで俺が志月に頼んだみてえだろ?頼んでもねえのに!
誰がこんなの欲しいって思うか!欲しかったら自分でこっそり…
って、違う違う!こんなの別に欲しいなんて思ったこともねえよ!今まで!

「大体な。お前、何考えてんだよ」
「……ぷはー」
「ぷはーじゃねえよ!」
「え?宍戸へのプレゼントを最大級で…」
「それがどう間違ってコレだよ!」

そのテのビデオだとかDVDだとか、雑誌、漫画、写真集…
そんなんだったなら、まだ他のヤツも持ってるだろうよ。忍足とかな。
だけど、いくら何でもゲーム…ゲームはないだろ!どうしろってんだよ!

「いやー兄貴から売ってもらうの苦労してね」
「そこも問題じゃねえよ!」

どんな兄貴だよ。むしろ、お前に兄貴が居たことすら知らなかったな…
って、そこが問題でもないだろ俺!根本を考えろ、間違ってるだろ、コレは!
「誕生日おめでとう」って言いながらオズオズ出されるプレゼントの中身…
それがもっとこう…女の子が考えた、って代物だったらときめく、だろ?
でも、この場合は何をどうときめいて良いのかもわかんねえよ!

「じゃあ何が問題よ」
「物自体だ、物自体に問題あるだろ!」
「……あ」
「ようやく気付い――…」
「学園ものより別途設定が良かったわけね」

――それも違うだろ!



「……あのな」
「うん」

何で俺がイチイチ最初から説明しなきゃいけねえんだ?
しかも、こうも居た堪れない思いを誕生日にさせるかよ、フツー。
わざと用意したわけでもなさそうだし、悪気はないのかもしれねえけど、
コイツのためを思うなら、言わざるを得ない…よな?

「こういう…その…何だ…」
「嗜好品?」
「ちょい違うけどな。ま、そんなのは、だな…」

俺なりの論を簡潔に分かりやすく、出来るだけ伝わるようにと説いてみる。
こんなもんはこっそりと買うべきもので…ましてや女に貰うものではない。
大事にするしない、使う使わない以前の問題でどうして良いか困る、と。
奇抜で大胆な発想、笑いをとるべきであるなら別だが…

「……というわけだ。分かったか?」
「うーん」
「何だよ…まだわかんねえのか?」
「いいや。ただ…」
「ただ?」
「兄貴と忍足のアドバイスは役に立たなかったんだなーと」

……どんなアドバイスしてんだよ。
実の妹に余計なアドバイスをする兄貴も兄貴だけどよ。
問題は忍足!何で忍足なんざにアドバイスを仰ぐような真似してんだよ。
しかも忍足の案がコレ…変態だろ、変態!全然笑えねえよ!

「じゃ…次のアドバイスで」
「次?次って何だよ!」

ポケットから取り出したるは…飴玉…?
それを俺に手渡して食べろと言わんばかりの目をしてる…
ジローだ。これは明らかにジローの案に違いない。食い物…ポケットから出すなよ。

「これもダメか…じゃ次」
「まだあんのかよ!」

向日がくれそうな弁当屋のから揚げセット、長太郎がくれそうな参考書、
滝がくれそうなシャンプーセットに、日吉がくれそうな…ご護身術の本!?

「……勘弁してくれ」
「そっか…これもダメか」
「ダメとかじゃなくてな…」
「じゃあ、最終手段」


・・・・・・・・・・・・


跡部が提案したと思われるものだけは、返品せずに取っておこうと思う。
本人がそれで良いって言ったんだ。絶対に返品はしねえ。
何を貰ったのか、何を提案したのか…それは数時間後には広がるだろう。



Happy birthday to R.Shishido. vol.1

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