LA - テニス

07-08 携帯短編
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「はいはいはい、跡部はコレね」
唐突に部室に呼ばれたかと思えば…異様な光景が広がってた。
今日は何の日だ?と問われたならば答えはたった一つではあるが…
お前の年はいくつだ?と敢えて違う問いを投げ付けてやりてえ。
いや、敢えて投げ付けないべきなのか?忍足まで便乗してるわけだし、な



夢中になれるもの



冷静に考えること数分。
未だに考えてることがまとまりやがらねえ。

「準備はいいかーい?」
「「イエーイ!」」

今の言葉に反応したのはジローと向日だけ。ちょっと宍戸も反応仕掛けたが。
忍足苦笑、鳳微笑、日吉溜め息、樺地無表情…こんな最中、俺はどうすればいい?
ただ呆然としとくわけにもいかねえとは思うんだが、今、俺がすべきことが分からねえ。

「ルールは至ってシンプル!敵をとにかく撃つべし!」

撃つべし!じゃねえよ。そんな遊びをするためのモンじゃねえだろうよ。
微妙に色分けされてんのはアレか。味方識別のための仕様なのか?
こんな時ばっか労力費やして…無駄とか思わねえのかよオイ。

「何か質問のある人!」
「……はい」
「ハイ、日吉くん!」

……何だそのノリは。
ここはガツーンと言ってやれ日吉。今回ばかりは俺様が許す。
お前も準レギュラーから部長候補に挙がった男だ。ビシッと言うべきことを言え。

「この撃ち合いに意味などあるのですか?」
「あります!」

……即答かよ。

「よーく考えて下さい。先輩を撃つチャンスです!」
「チャンスて…」
「黙れ忍足。で、今まで溜まった鬱憤を晴らすチャンスでもあります」
「だから若と跡部は別々のチーム、か…」
「ナイス宍戸!その通りです!」

オイ!んな理由で俺様を撃つヤツなんざいねえぞゴラ!
大体、色んなもんの主旨が違ってんだろ!意味分かってんのか?
節分の豆まきってのはな、年男もしくは一家の主人が健康祈願のためにまくもんなんだ。
今、俺たちの中でそれが当てはまるヤツもいなけりゃ、家の主人もいねえだろうが。
何だ…俺はそこを突っ込んで止めさせるべきなのか?オイ。

「と、いうことで…ご理解頂けましたか?」
「……勿論」
「待て待て待て!」
「はい、跡部くん」

監督のポーズを真似て指差してんじゃねえよ。この馬鹿が!

「わざわざ呼び出されてすることかよ、コレが!」
「楽しけりゃいいじゃん。ねえ、皆さん」

腕組みしながらチラリと周囲の確認をする志月に合わせて俺も確認する。
ジローと向日はしっかりと頷き、日吉も目ですでに俺を敵視してやがる…
忍足は「余興余興」と小さく呟いて、それに便乗して鳳も樺地も頷きやがった…!
勘弁してくれ…俺様の時間をいとも容易く潰してくれんな。こんな下らないことで。

「えー要は跡部はリタイアですか?」
「……リタイアだと?」
「豆鉄砲が怖くて逃げる、ということだよね?」



チーム編成は以下のようになってた。

ジロー・向日・日吉・宍戸の4人で赤のチーム。
俺・忍足・鳳・樺地・志月の5人で青のチーム。

何だ…青は率先力少ねえなオイ。やる気のあるヤツは志月しかいねえ。
これじゃ完全に撃たれ損ってヤツにならねえか?
日吉のヤツは相変わらず俺様を凝視してやがるし…完全に狙ってるなオイ。
で、残りのメンツも結構気合入れてやがる。

「行動範囲はこのコート全面。味方は出来る限り撃たないこと」
「出来る限り、て…」
「はい、黙れ忍足」

……要は嫌いなヤツを撃てばいいのか?
今、何気にそんな風に聞こえたぞ。ってことは…全員敵、なのか?

「ではでは、バトルロワイヤルin節分を始まるよー!」
「「イエーイ!」」

多分、お手製だと思われる何とも言えない青のお面を装着。
おそらく適当に買ったと思われるオモチャのパチンコを片手にうな垂れる。
今日は日曜日だぜ?日曜日。こんなことするために休日に出て来たんじゃねえし。
……と思っていても後の祭りだけどな。

「くれぐれも怪我のないように!あ、あと豆の袋破らないでねー」

酒のつまみみてえな袋入りの豆。コレで撃てって方が間違いだと思うんだが。
あー何だよ、関西人が突っ込み入れない所為でモヤモヤしやがるじゃねえか!
この何とも言えないストレス、何処で発散してやったらいいんだ?

「跡部先輩」
「ああ?」
「ストレスは敵に向かってぶつければいいんですよ」

……爽やかに言ってんじゃねえよ!

「単なる余興やさかい、適当にしたらええねんて」
「その割には向こう方はハリキッてますけどね」
「おーそこは適当に回避や回避」

馬鹿だ。もう此処に居る連中は志月に感化されちまってる…!
思い出せよ、このコートで俺たちがどれだけ頑張って来たかを。
そんな場所で阿呆なことすること自体、有り得ねえだろうが!

……監督、監督は何やってんだ?
こんなだけの騒ぎを聞き付けて来るのが監督の役割じゃねえのか?

「タロちゃんなら今日はお休みだよ」
「は?」
「タイに出張だって」
「はあ?」
「メインは多分、ハッポン通りとみたね」

……あの役立たずが!

「跡部」
「んだよ!」
「ちょい前から心の声が口から漏れよるで」

やべえ。本気でイラついて来た。
どう見ても仲間も仲間とは見れなくなってきやがった。


「では、ガンガン撃って厄払いしましょう。スタート!」


腰に携えた袋には30くらいの玉…というか袋入り豆。
片手に思いっきり掴みこんで一気にゴムに掛けてぶっ放す。
敵も味方もねえ。今あるストレスを発散するために、俺はただぶっ放す。

「のわ!俺まで撃つんかい!」
「どいつもこいつも…くたばれ!」
「おー跡部がご乱心なされた」
「てめえの所為だろ志月!」

ありったけの玉にありったけの殺意を込めてひたすら撃つ。
ただひたすらに撃ち続けて…気付けば玉は全てコートにぶちまけていた。



御題配布元 taskmaster 夢中になれるもの

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