LA - テニス

05-07 PC短編
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---音楽を鳴らす



何度見ても結果は同じ。
それでも何度も確かめてしまう。
1年の時は階違い、2年の時は二つ先。今年は……


確立は限りなく低いと思ってた。
同級生の人数、クラスの数から言って難しい。
だけど、専攻しているモノは似ていて…
それだけでも少しは確立が上がるものと思っていた。

「確立以前に、運なのかな…」

いつまでもクラス変更を記した掲示板を眺める。
意中の人と同じクラスになる確立は皆平等で低い。
誰もが同じクラスになることを祈れど、半数以上の人が叶わない。
私もまた、その人だということを知る…
悲しい現実というヤツ。

「志月」

私ってば、溜め息しか出ない。
幻聴で声が聞こえるくらいに思い詰めてるみたい。

「……志月。現実に戻って来い」

「わッ。い、いつから…」
「先程から隣に居たが…?」
掲示板を見て溜め息を繰り返す間に、俗世間から遠ざかったトコにいた。
そんなカンジもしつつ、呼ばれた声で現実に戻される。しかも、彼の声で…
「何をそんなに溜め息ばかりついているんだ?」
「…まぁ、色々ありまして」
い、言える筈がない。本人を目の前にして…
思いっきり作り笑いをして、適当に誤魔化してみる。
クラス替え如きで悩める人間も珍しい。
そう言いたげな彼の表情、確かにその通りです。
たかがクラス替え…されどクラス替え。
最後の最後でクラスくらい同じになって、みたいな夢も見たかった。
「志月のクラスは隣…か」
「あ、うん。隣だけど、よろしくね」

1年の時は同じクラス委員として会議とか一緒で、だけど接触はない。
2年になって委員会が同じで、接触は多くあった。
結構有名な人で、付き合いづらそうな面持ち。
だけど、色々と接触を増やすごとにイメージは変わって…
気付けば祈るようになっていた。"同じクラスになれますように…" と。

「志月は何を専攻した?」
「文系。柳くんと同じ」
早くも進路調査などが始まり、クラスがそれらに変更されつつある。
文系専攻者は文系クラス、理系専攻者は理系…
大学付属の学校は中学生と言えども、全てが早い段階で分かれる。
だからこそ、少し確立は上がると信じていたのに。
「そうか。だから今年は少し近いクラスなんだな」
「みたいだね」
「俺はてっきり理系を専攻しているものと思った」
理数系は苦手ではない。
だけど、成績もそこまで良くない。
数学をやらせれば計算ミスが相次ぐ。
理科の実験では色々なモノを破壊する。
ある意味、見られてはいけないモノを見られずに済んだのは…
今までクラスが違ったから。
「その心は?」
「人の世話とか好きそうだからな」
「……?」
意味のわからない返答に多少、困る。
世話好き=理系なんて式は私の中にはない。
多分、他の人であってもないだろう。
「意味がわからないんですけど…」
会話を自己解決してそうな彼にそう告げる。
こちらを見ている彼は少し困った表情。
重い口を開くのを待った。

「看護師、とか似合いそうだと勝手に想像してた」

現実派だと思っていた彼が想像…
自分の世話すらあまりよく出来ていない私が看護師。
私的には最も在りえないと言える道。
「多分、それ向いてないと思う」
「…そうか?」
「私は自分の世話で精一杯だもん」
そう言うと彼は少し笑った。
私としてはお節介は出来ても、世話は難しい。
でも、お節介も苦手。怒られても困るし。
「あくまで想像だ」
「だから、その想像はどこから…」
次の彼からの言葉。聞いた瞬間に少しだけ固まった。
「いや、白衣が似合うだろうな…と」
問い詰めてしまった私も悪い。悪いとは思うけど…
「ちょっと親父っぽい…かも」

彼と私。お互いに少し苦笑いして、立ち尽くす。
クラス替えの掲示板前、周りに人は少なくなっていた。

「そろそろクラスに行かねばな」
「そうだね」

私のクラスは彼のクラスの隣。
一緒に下駄箱へ行き、階段、廊下と共に足を進める。
階段から近い教室が私のクラス。その先が彼のクラス。
近いようで、遠くに感じる…

「では、またな。志月」
「うん」

過ぎ去る途中で思い出したかのように彼が私の前へ。
そして、一言告げて教室へと入っていった。

「今度もまた、委員会議で会おう」



◆Thank you for material offer 煉獄庭園
御題配布元 BERRYSTRAW 学園ラブ 5のお題「隣のクラス」


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