LA - テニス

05-07 PC短編
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---音楽を鳴らす



昼休みの間、日光浴を兼ねて屋上へ。
少し日差しが強ければ日陰、そうでもなければ柵の傍。
何でもない時間を過ごしていく。それが、私の日課。


見上げる景色と見下ろす景色。
同じものを見ているはずなのに、受ける印象は大きく違う。
見上げれば大きいモノでも、見下ろせば小さく見える。
これって当たり前だけど感動的。
観覧車に乗った時にだんだんと小さくなっていく建物。
これを初めて見た時の感動が思い出される。

割と高いところが好きな私、いつも屋上から眺める。
周りの景色。見上げたり見下ろしたり…
大きくは変わらない景色でも、時期を追えば少しずつ変化する。
その変化がとても好きだと知る。

「イイ天気…」

暑くもなく、寒くもなく。
風は心地よく、昼寝に最適な条件が揃ってる。
ただ、ココが学校でなければ。

「……年寄り」

そうしていると決まって現れる。
小生意気な姿、礼儀をわきまえない言葉を持って…

「また来た」
「来ちゃ悪い?ココ、学校なんだけど…」

最近までランドセル背負っていた成り立て中学生。
わざわざ、私の目の前に現れ始めて…もう数週間が経つ。
少し大きめの真新しい制服が目立つ。

「知ってるよ」

毎日毎日、私と顔を合わせては何かを話す。
会話には程遠いような…そんな言葉を交わすだけ。
居心地が良いのか、悪いのか…

「親が恋しいなら他を当たりな」
「別に。好きでココにいるだけだから、気にしないでイイっスよ」

成長前の1年坊主。
本当に"ああ言えばこう言う" な生意気な小僧っ子。
子供のお守りは…得意じゃない。

「いっつも何してんの?」
「…アンタこそ」
「俺は日光浴っスよ」

だったら、別の場所でやれ。
とは言えず、ただ溜め息をつく。

「アンタは?」
「…日光浴を兼ねた見物よ」
「目的同じじゃん」

同じ、そんなコトはない。
コイツは別に景色を堪能しているわけじゃない。
ただ単にココにいて…まるで人恋しくなった猫のように寄ってくる。
私とは、違う。

「近くと遠くでは印象が違う、そう思わない?」
「何がよ」

見つめる先は柵越しの外の景色。
その目線を追って、私もそちらの方向を見る。

「アンタも違うね。志月先輩」

私が見た時には、彼は傍で寝そべっていた。
まるで猫のように…

「何で私の名前、知ってんの?」
「蛇の道は蛇、みたいな」

仲間のすることは、その仲間が一番よく知っていること。
"蛇の道は蛇"の意味。

「…アンタ、諺の使い方おかしいわよ」
「帰国子女なモンで、その辺よくわかんないんス」

どちらも的を得ない返答。
だけど、空を仰ぐうちにどうでも良くなった。

「予鈴鳴ったら起こして」

彼はそう言って眠りにつこうとしている。
私の隣で、空を仰いで…

「私、アンタのコト知らないんだけど」

すると彼は一言。
目を開けて、生意気そうな笑みを浮かべて。

「1年、越前リョーマ」
「…別に名を名乗れとは言ってないわよ」
「名乗ったからには知り合いっしょ?」



◆Thank you for material offer 煉獄庭園
御題配布元 BERRYSTRAW 学園ラブ 5のお題「屋上から見える景色」


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