LA - テニス

05-07 PC短編
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「…何でそないプリプリしとんの?」
「…別に。プリプリなんか」
珍しく部活がないっていうから嬉しくて歩けば…コレですよ。
どんなフェロモンを所有しているのかは知らないけど異常よ。ホラまた。
老いも若きも振り返る、そんななかで歩いてプリプリしない女の子が居たら見てみたい。
心底、見てみたいですよ。そんな寛大な人ッ。


一緒に歩きたいって言ったのは私。放課後、帰り道、彼氏と。
こんなシチュエーション、学生時代にしか味わえないって思わない?
それがこんな状況になるなんて…予想以上に面白くなさすぎ。
容姿だけで振り返るのは止めて。彼の性格は褒められたモンじゃないのよ?
"男は優しさとエロがあればモテる"なんて変な教え、宍戸に説いてるんだから。
見た目は良くても、中身は変なのよ。変人か変態かの部類なんです。
「ゆい…般若みたいやで?」
「そんな般若みたいなのがアンタの彼女っしょ?」
これで違う、なんて言われた日には心中決定。否応なしに無理心中。
原因は痴情のモツレか何かだって報道で取り上げられるわね。間違いなく。
「いや…そうなんやけど…」
「文句でもあるわけ?」
私に恐れを生したのか、侑士は首を小さく振った。

彼に八つ当たりすること自体が間違っていることは重々承知の上。
私がちょっと嫉妬深くて、それでこんなコトになっているのも承知の上。
本当はわかっていることなのに、どうしようか感情が止められない。
侑士の隣で私が歩いていようとも、他の女の子は目を奪われている。
私なんかは当然、眼中にはなくて侑士に見惚れている。
その現状、それだけの現状が許せないし、許されない。

「思いっきり叫んでやったら気が済むのかも…」
「な、何やねん急に…」
「侑士は私のモンだーって叫んでやりたい」
みっともない真似だってこと、子供っぽい独占欲だってこと、
私の発言に意味なんて為さないってこと、わかってるのに止められない。
侑士が、迷惑して困っているかもしれないのに…
「……プッ」
「な、何笑ってんのよッ」
笑い出したかと思えば、ポンポンッと私の頭を軽く叩く。
まるで子供のような扱いを受けて…それでも、ちょっと嫌じゃない。
「何でさっきから怒ってんやろー思うたら、そうやったんや」
「ちょっと、勝手に納得しないでよ」
「あれやろ。自分、嫉妬してんのな」
思いっきり図星ではあるけども、そんなにハッキリ言わなくても良い。
しかも、まだ笑ってるし…頭も叩きっぱなし。
「可愛えなあ」
「…うっさい」
何がツボに入って、軽く涙なんか流してまで笑いやがって…
結構私なりに真剣に、本気で叫びたいって思ってるんだから。
今も笑う侑士を横目で見ていく、綺麗なお姉さんに向かってッ。
「叫ぶんもええやろけど、俺の横で笑うとった方が効果あると思うで?」
「え?それじゃ意味ないじゃん」
ただ侑士の隣でにこにこ笑ってても主張は出来ない。
今はとてつもなく、主張したい気分なのに。
「アホやな。自分、こないに可愛え顔しとるんや」
「それ、ただの侑士の欲目」
「俺の隣にピッタリ付いて笑うてくれた方が、よっぽど虫除けになるわ」

――怒った顔しとったら、相手に負けたって思わせるだけやで?

「…そう、かな?」
「物事何でもポジティブに考えよな」
侑士はただ笑って、今度は優しく頭を撫でてくれた。
頭を撫でて、その手で私の手を軽く握る。
「ゆいの笑うてる顔、化粧でカバーしとる姉さんより魅力あるんやから」
単純明快な言葉、跡部ならキザって言うかもしれない。
宍戸なら鳥肌立てて寒がるかもしれない。
だけど、私にとっては…大きく変化を為す重要な言葉。
「…その言葉、嘘偽りないよね?」
「もちろんや。伊達にゆいに恋しとらんで?」
彼が、そう言って笑ってくれるのであれば、そうしてみよう。
効率の良いやり方で、彼の隣を確保してやろう。
気持ちでは、化粧を施した姉さんたちには負けないんだから。



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御題配布元 BERRYSTRAW 学園ラブ 5のお題「制服デート」


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