LA - テニス
□05-06 PC短編
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鍵の指輪
( あ…コレ可愛い… )
気に入った指輪は安物ばかり。
それでも人に強請ったコトなんかない。
「あ?コレが欲しいのか?」
目敏いんだけど…
うまく『買って』なんて言えない自分は意外と可愛らしいの?
本当に欲しいモノは言えない。
「別に」
それが指輪だったから余計…なのかな?
「そうか…」
景吾がいなくなった隙に自分で買った指輪は数知れず。
もちろん、安いモノばかりだし意味もない。
それでも日替わりで着けてみては景吾の顔を窺ったりもする。
「欲しいんだったら指輪ぐらい買ってやるけどな」
『指輪ぐらい』
景吾がそう言ったから…私は強請ったりなんかしない。
そう考えてもココロは正直で…
私は景吾が買ってやる、そう言った指輪に期待してしまうの。
「…いらない」
口ではそう言ってしまうけど、察してはくれないのかな?
そろそろ気付いてくれたって良くない?
「…おい」
「んー?」
こんなコトがあった日は大抵そう。
私は一人、景吾の部屋で雑誌を読み出す。
「また拗ねてんのか?」
拗ねてる、そう思われても仕方ない。
だけど…辛いじゃない。
「…お前、俺が気付かないとでも思ってんのか?」
「え…?」
…気付いてくれたの?
「俺の鍵に付けるなよ…指輪」
そっちか…
悔しいから安物の指輪を買っては、景吾のチェーン付きの鍵に黙って付けていく。
意味はないけど…察して欲しいから。
鍵に並んで指輪は三つ。
その数だけ…気付かなかった証拠。
「いいじゃん。それだけ付属の付いた鍵なんだから、指輪の一つや二つ」
「ま…いいけどよ」
鍵と並んだ指輪。
そろそろ些細な意味に気付いて?
「ゆい。今度はもっとセンスの良いヤツにしろよ」
気付くまでに一生は終わる気がした。
「…そうするわ」
鍵の指輪