LA - テニス

05-06 PC短編
8ページ/48ページ

鍵の指輪




( あ…コレ可愛い… )


気に入った指輪は安物ばかり。
それでも人に強請ったコトなんかない。

「あ?コレが欲しいのか?」

目敏いんだけど…
うまく『買って』なんて言えない自分は意外と可愛らしいの?
本当に欲しいモノは言えない。

「別に」

それが指輪だったから余計…なのかな?

「そうか…」

景吾がいなくなった隙に自分で買った指輪は数知れず。
もちろん、安いモノばかりだし意味もない。
それでも日替わりで着けてみては景吾の顔を窺ったりもする。


「欲しいんだったら指輪ぐらい買ってやるけどな」


『指輪ぐらい』
景吾がそう言ったから…私は強請ったりなんかしない。

そう考えてもココロは正直で…
私は景吾が買ってやる、そう言った指輪に期待してしまうの。


「…いらない」


口ではそう言ってしまうけど、察してはくれないのかな?

そろそろ気付いてくれたって良くない?


「…おい」

「んー?」

こんなコトがあった日は大抵そう。
私は一人、景吾の部屋で雑誌を読み出す。

「また拗ねてんのか?」

拗ねてる、そう思われても仕方ない。
だけど…辛いじゃない。

「…お前、俺が気付かないとでも思ってんのか?」

「え…?」


…気付いてくれたの?


「俺の鍵に付けるなよ…指輪」


そっちか…


悔しいから安物の指輪を買っては、景吾のチェーン付きの鍵に黙って付けていく。
意味はないけど…察して欲しいから。

鍵に並んで指輪は三つ。
その数だけ…気付かなかった証拠。


「いいじゃん。それだけ付属の付いた鍵なんだから、指輪の一つや二つ」

「ま…いいけどよ」

鍵と並んだ指輪。
そろそろ些細な意味に気付いて?

「ゆい。今度はもっとセンスの良いヤツにしろよ」


気付くまでに一生は終わる気がした。


「…そうするわ」



鍵の指輪
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ