LA - テニス

05-06 PC短編
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ギュッと…



自分じゃない他人を好きになったら誰でも不安になる。

それは自分じゃないから…。





「景吾…」

「あ?」

時折、何時間も傍にいるのに不安になる。

「テレビ…変えよ?」

声を聞いて…返事も返って来るのに寂しくなる。

「あ?別にいいけどよ…」

泣きたいほどに…胸が痛くなることがある。


私だけ…?


こんなに一緒に居れて、話だって出来る。
彼が私をスキだって…痛いほどに伝わってる。
それなのに、私は…


「景…吾…」

「な、何泣いてんだよッ」


『何か』に不安になっているの…。


「何だよ…どうしたんだ?」

「……」

「ゆい…?」


疑いも心配も何もないのに
自分の気持ちもこんなにハッキリとしてるのに
依存してしまっているのが…怖い。


「ゆい」

ただ抱き締めてあやしてくれる景吾。
その腕の中で泣いた自分。

「どうしたんだ?」

言葉に表せなくて首を横に振るしか出来ない。

「……この関係が嫌になったか?」

派手に公表はしていない私たちのカンケイ。
隠してもないけど、堂々ともしていない付き合い。

「……」

それは嫌じゃない。
辛い時はあっても、景吾は否定しないから…。

「他に好きな奴が出来たのか?」

「……」

好き…だから、もっと一緒に居たいと願う自分。

「……俺の気持ちを疑ってるのか?」

そんなことも…ないの。ただ…


「少し…だけ不安になった…」


よくわからない感情が
目に見えない不安が
波となって押し寄せただけ…。


「…ごめんな」

景吾の言葉にまた首を振る。



悪いのは景吾じゃない。
依存してしまっている自分。
我儘になってしまった自分。


「好き…大好き…」


何度もキスを繰り返して
何度もキツく抱き締められて

『ごめん』そう言いたくなった。

私も景吾を不安にさせてるよね?


「……離れたくない」

「俺もだ」

涙を流しながら見つめた先にあるのは
少しだけ嬉しそうな景吾の顔。

「大好き」

何度、口にしても足りないくらいの言葉。
それが嘘に聞こえても構わない。
私は本気で景吾が好きだから。

「好きだ」

強く…強く抱き締めてくれる腕。
それだけで満たされていくよ。




だから…たくさん抱き締めて?



ギュッと…
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