LA - テニス

05-06 PC短編
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学校に行けば必ず逢える。

その空間にいる間は必ず逢える。

でも、家に帰ってしまえば…

その時の記憶だけを頼りにして

貴方を思い出すだけ…



女々しいですか?

貴方に依存してしまった私は…







そ の 理 由








今日も家で携帯と睨めっこ。

いつしか、メールを打つ手も止まった。

だって…こんなモノじゃ感情は読み取れない。

貴方の言葉がわからない。


――私は我儘ですか?


メールに応じなくなる。

掛かって来た電話も取らない。



"貴方はいつも何を考えているんですか?"



最後に送られて来たメール。

よく疑問に思ってるみたいだね?


返事を返さなくなった私。

しばらくして届く貴方からのメール。

決まって同じコトを聞きたがる。


「…はじめのコトだよ?」


難しいことなんてない。

私は馬鹿みたいに単純で…本当にそれしかないの。





鳴り始めた携帯。

ディスプレイに映る名前は"観月はじめ"

「……」

掛けてくれる気持ちで十分。

それだけで…心は満たされるよ?



だから取らなかった。



きっと明日、また怒るだろうね。

何で無視するのか、って眉間に皺を寄せて…

ちゃんと理由があるんだよ?





「ゆい、電話よ」

部屋の扉の向こう。母親の声が聞こえた。

「はいはい」

部屋を出て、保留音楽の流れる子機を受け取る。

家の電話へ掛けて来る人なんて珍しい。

「誰から?」

「さぁ?学校関係の電話みたい」

そんな電話…

別に適当に切ってくれればよかったのに…

「…もしもし」

「あ、私は……」

学校勧誘の電話。

高校は決まりましたか、から始まるしつこい電話。

相手も仕事なんだろうけど…

「…それでですね……」

――ピピッ。

キャッチが入る。ナイスタイミングだよ。

「すみません。キャッチが入りましたので…」

相手の言葉も聞かずに電話を切る。

次のノルマに行って下さい、そんな気持ちで。

そして、掛かって来た電話を取る。

「はい、志月です」

「……」

――無言…ですか?

「もしもし?」

「僕からの電話は取らないのに、自宅の電話は取るんですね」

耳元で響く声。

穏やかに…冷たい声。

「えっと…観月サン…ですか?」

「そうですよ、志月さん」

…やっぱり怒ってるわ。

「一体、どういうつもりなんです?ゆい」

「えっと…」

「返答次第では説教では済みませんよ?」

耳元で響く声が懐かしく、切ない。

遠くに感じて…

「メールは途中で落ちる、電話には出ない。理由は何です?」


それを…言っても平気なのかな?


「…言って困らない?」

「困るような理由なんですか?」

「わかんない」

「だったら言わないとわかりません」



「寂しくなって逢いたくなるから」



やっぱり、何も言えなくなるんじゃない。

私はどうしようもない子なんです。

依存してばかり…



「だったらそう言いなさい」

観月の説教の始まり。

ノンストップモードに突入して…



「…電話じゃラチが明きませんね」



今からそちらに行きます、それだけ言って電話は切れた。



-その理由-
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