LA - テニス

05-06 PC短編
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光 と 闇 -05-



臆病だった。


ただ臆病だった自分は

他人のせいにして逃げていただけだった。




















――カチャ。




「…誰だったんだ?千石」


インターフォンの音が鳴り止んだ。
玄関先で声が少しだけして、誰かが出て行く音がした。
新聞勧誘、だと思っていた。


「私だよ」

「……ッ」

「あ、結構可愛いパジャマ」


これは意図的なモノ。
千石が用意した…新手の嫌がらせ。


「ッ…志月ッ」

「驚いた?千石と話し合って脅かしに来ました」

「…千石は?」

「帰っちゃった」


フッて、フラれて…
そんな二人が普通に手を組むか?


「昨日、調子悪そうだったのはコレのせい?」

「は…」

「具合、昨日から悪かったんじゃない?」






昨日、見てた、のか?






「……」


「……」






言葉が止まる。

返す言葉もなく、ただ呆然。






「…私ね、勘違いされてたみたい」






呆然と顔を見つめて…






「私ね……」












「志月が好きだ」











気付けば、彼女の口を塞いで

そう告げていた自分。











「…知ってた。けど、言って欲しかった」

「え?」

「一番鈍感なのってやっぱり南くんだった」


彼女は笑っていた。
俺はただ自分の不甲斐なさで…


「ホントだな」


笑った。











背中を押されて、誰かにお膳立てされて…

得たものは大きくて重い。


故に…

どちらも大事にしないと…











「千石にお礼、言わないとな…」

「…そだね。私も相談に乗ってもらったわけだし…」

「……相談?」

「そ。ずっと相談してた。『南くんが好きなんだけどー』って」



前言撤回。



「…騙されたッ」



-光と影-
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