LA - テニス
□05-06 PC短編
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光 と 闇 -02-
例えるなら…
自分に正直な千石が『光』なら
俺は全てを隠し続ける『影』のようなモノ…
長机に椅子が二つ。
クラスの委員長と副委員長が並んで座る。
俺の横には…
「……退屈だね」
「まだ始まったばかりだろ?」
時間が過ぎるのを待つ彼女の姿。
クラス委員長の志月と副委員長の俺。
真面目な二人だから、そう言って担任の推薦で決まったコト。
少なくとも、その時は素直に喜んだけど…
「早く終わらないかな?」
「…どうだろう?」
時計を見れば、時間を進める秒針はゆっくりと動く。
進行している生徒会長はただ資料を読み上げるだけの作業。
聞く方も飽きる。
「心配なんでしょ?」
こそこそと放し掛けて来る彼女。
少しだけ彼女の方を向けば、いつもの笑顔。
「何が?」
「千石が練習サボッてないか」
そして出てくるのは…
いつも千石、千石、千石、千石、千石…
俺たちの共通点はコレしかない。
こうなった時、どれほど推薦を蹴れば良かったことか…
そう思うようになっていた。
「後輩に見張らせてるから」
「なるほど…さすが部長」
「それでも遊んではいるかもしれないけどね」
それしかない話題。
身を削って、必死に応えて…
「南くんはエライね」
会話を続けていく。
彼女にも…悟られないように必死で。
「そうかな?」
「うん。練習熱心だし」
「ありがとう」
崩したくないモノがあるんだ。
壊したくない関係がココにもあるんだ。
「彼女とかいないわけ?」
無知は怖い。
残酷にも刃は俺に向けられて…
「いたらすぐに千石が言って回るよ」
「だよね〜」
でも、それをさせているのは…
自分自身。
それでも…
この時間だけが唯一の時間。
唯一、共有出来る時間。
それなのに…
「千石は彼女とかいるのかな?」
自分を痛めつけても
壊したくないと思うのであれば…
「千石もフリー。モテるんだけどな」
「今頃、どれにしようか決めてたりして」
無邪気に笑う彼女に対して
俺は返す言葉もなく、ただいつもと同じ顔をしていた。
「…もう決まってるよ」
「え?」
「もうすぐ終わりそうだよ?」
時計の針は進んでいた。
会長の資料も終盤になったらしく、プリントの枚数はわずかになっていた。
「やった。もうすぐ帰れる」
「…よかったね」
俺の心の限界は…
どこにあるのだろう?
「じゃ、部活頑張ってね?」
「ああ」
「千石にもよろしく」
教室から去っていく彼女。
また視線だけで追っていく自分。
決定打、そう思ってもいいだろう。
だったら…
尚更に隠す必要もある。
壊したくないから。
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