LA - テニス

05-06 PC短編
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光 と 闇 -01-





長い間、一緒に居たと思う。


その結果…

全てが正反対だと思っていた。




















「ジミー、辞書貸して〜」
「ジミー言うな」
「わかったよ、ジミナミ…っていいから辞書ッ」

そりゃ…千石から比べたら地味かもしれない。
むしろ、俺は普通であって…本当にごく普通だと言い切ってもいい。
逆に言えば、千石が目立ちすぎ。

「ジミナミもやめろッ」

真面目に部活して、そこそこ勉強して…
人並みに好きな子がいる、そんな普通な学生だと思う。

当たり前だけどな。



「相変わらずだね」



いつもの笑顔でやって来る。
俺のクラスメイトでクラス委員長の…

志月、ゆい。


「……あ」
「ゆいちゃんッ」

千石の目の輝き。
最初はいつものコトだと思っていた。

「今日も素敵だね〜」
「ありがと。千石もいつもと同じ」
「いつもと…って変わんないってコト?」

違う、そう気付くまでに時間は掛からなかった。
長い付き合いの果てに…培って来た観察力は伊達じゃない。

「そういうコト」

いつもの会話、
いつもの構図、
いつもの…

だからこそ壊したくないモノがある。

「南くん、元気?」
「…それなりに。元気だよ?」
「そっかー」

例え、自分の感情を押し殺して
自分の心の底へと封印してしまおうとも…。










自分は弱いと思う。
臆病だと言われても仕方ない。

常に感情を表に出せる人間が羨ましく、
それと同時に憎らしさも感じる。

だけど、そうすることも出来ない自分は…

きっと弱い人間なのだろう。









「今日の委員会、遅れないようにお願いね」

彼女はそれだけ言い残して女子生徒の群れへと戻っていく。
その様子を視線で追いかけて、返事も返せぬまま…

千石も同じように、彼女を視線で追いかけて…

「いいなぁ…あの子」
「お前は女の子全般イイんだろ?」

気付いてないフリ。
感情を押し殺して、平然を装うだけ。

「あの子は特別ッ」

同じように俺も彼女を追いかけておきながら…

「ハイハイ」

そ知らぬ顔をするだけ…

「ジミナミも好きなくせに〜」
「嫌いじゃないよ?」
「……冷静でつまんないよ〜?」








何も知らない千石。

何も悟らせない俺。


どちらがズルイだろう…?








「わかりすぎるのも面白くないだろう?」

首を傾げる千石にただ笑う。
苦笑にも近い、自嘲に近い笑顔。

「何が?」
「お前みたいに感情剥き出しにしてたら…いろいろね」

納得したような、していないような。
そんな表情をしている千石。

気付かなくていい。

「俺が委員会に出てる間、サボるなよ?」

むしろ…
このままで居てくれたなら

「へーい」
「太一に見張りをさせるからな」



きっと…

風化する時がやって来るから



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