LA - テニス

05-06 PC短編
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『学園の眠り姫』

そんなあだ名が付けられていること自体、

きっと興味はないだろうね。

そうじゃなければ…

毎回毎回、こんなところでは眠っていないだろうから…




眠り姫の寝顔




今日も穏やかに眠る寝顔。

余程、幸せなんだろう。

少しだけ微笑んだり、笑ったり…

現実でも見ないような表情を繰り広げている。


昨日は裏庭、その前は屋上、その前は…

気付けば、彼を捜して隣に座るようになっていた。


特に意味なんてない。

意味なんか…ないのに

なぜ、私はココに座るようになったのだろう。


「…よくコロコロ寝れるわね」


幸せそうな寝顔。

これから秋が過ぎて、冬になって…

とにかく寒くなっていくという季節の中、

どうして外で寝ているんだろう。


「子供は…寒くないのか?」


同い年の芥川慈郎。

テニス部で有名な子だけど、その行動は小学生に近い。

それを私は子供だと認識していた。


話したことはない。

起きている時に見掛けたこともない。

ただ…

この場所での寝顔と噂、それだけが唯一の情報だった。


「……」


何も考えたくない時間。

そんな時間に限って逢いたくなる人。

眠っているだけの存在に私は何を求めているのだろう?


「……」


隣に寝転んで天を仰ぐ。

真っ青な空に吸い込まれそうな感覚のなか、

空に取り込まれるのが怖くて目を閉じた。


「…寝てる時間は逃避してるのかもしれない」


無の時間。

流れる時間の中で止まっている思考。


「…アンタも逃避したいの?」


答えはない。

聞こえるのは寝息だけ。


「私は…」


何から逃避したいのだろう。

この狭くて広い鳥籠の中で何を…?


「…なんで寝てるの?」


現実では聞くことの出来ない質問。

もし、夢か現実…

どちらかで逢うことが出来たなら、私はきっと聞くだろう。


「……」


青の代わりに襲ってくる闇。

闇に体を委ねて、考えることを止めた。


深い眠りのなか、暖かなモノを感じながら…



ジロちゃんシリーズ・2
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