LA - テニス
□05-06 PC短編
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とある季節の昼下がり。
先生の気まぐれで席替えなんかあった。
前後だった忍足との距離も…そう思ってたけど…
「そんなに俺から離れたくなかったんか?」
運命の悪戯?
今度は私が忍足の後ろの席になった。
悪戯 ・・・ぜんごかんけい
「そのまま言葉を返しておくわ」
「さよか。俺も離れたくなかったで」
「……はいはい」
彼から離れたくない、そう思った気持ちが通じたのであれば…
私はこれから神様に感謝して生きていきます。
そして、もしも忍足も同じように思ってくれたなら…
こうしてまたしばらく、私たちの距離は変わらなくなった。
「……」
授業中も目の前には忍足。
これは…心臓に良くないかもしれない。
授業に集中出来ない自分がいる。
( …授業中は真面目なんだ )
不謹慎な私は…そんなコトばかり考えていた。
授業中に回されて来るプリント。
それを回して来る忍足の指が綺麗。
その時、ほのかに忍足の香りがする。
( ……席変わってもらおうかな )
軽いストーカーっぽくて、軽く変態ちっくな自分。
そんな自分が情けなくて、ちょっと溜め息。
「……?」
プリントに紛れて一枚のルーズリーフの存在に気付いた。
( …手紙? )
そこには綺麗…とまではいかないけど、
くせのある男の子の字が一行。
『俺が前におるからって緊張するなや』
見透かされてるみたいで、心を読まれているみたいで恥ずかしくなった。
『馬鹿忍足。アンタこそ、授業に集中しなさい』
合図は前の椅子を軽く二回蹴る。
察しの良い忍足は振り返らずに後ろ手を伸ばして来た。
無造作に私はまた忍足からの手紙に返事を書いて突き付けた。
先生にバレないように、周りにやり取りを気付かないように
そして、また返事が来た。
『俺は天才やから授業聞かんでも平気や。今度、勉強の仕方教えたろか?
つーか、志月から返事貰えて嬉しいわ、て言うたらお前本気にするか?(笑)』
前を向いているからわからないポーカフェイス。
それでもわからない忍足の気持ち。
『…するって言ったら?』
そう書いた手紙は渡す前に授業終了のチャイムが鳴って渡せなかった。
急いでやり取りした手紙を隠して、振り返った忍足に見られないようにした。
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