LA - テニス

05-06 PC短編
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好きな子に悪戯してしまうんは、しゃーないんちゃう?





悪戯 ・・・いたずら





「おはようさん、志月」

「おはよう」

「スカートのファスナー開いとるで?」

「えッ!?」

俺の前席に座るクラスメイトの女の子。

毎度毎度、からかわれてるっちゅうのにエエ反応や。

わざわざ確かめるため、左の腰に手を当てる彼女は可愛かった。

「嘘やけどな」

俺は笑いながら後ろの席へ。

彼女は口元をプルプルさせながら、振り返って一言。

「…ウソツキ野郎ッ」

「口悪いと俺に嫌われてまうで?」

「上等だッ」

今時、こんな言葉を吐く女も珍しいと思う。

そんな喧嘩腰に来られたんやったら、ホンマならその喧嘩は買うたる。

せやけど何でやろな…彼女見とったら、そんな気も失せてまう。

「ホンマ、口悪いねんけど…憎めんくらいかわえぇな」

くすくす笑いながらそう言うと、少しだけ顔色が変わった。

「冗談やで?」

「…死ねッ」

ぷんすか怒って前を向いてしまった彼女。

まだ、ただのクラスメイトに収まったままの俺の片想いの相手。

「口悪いなぁ」

何か細い背中を見つめながら、俺はいつも思う。

ホンマに好きやな…て。

「怒った?」

その背中をつつきながら、俺は席を近付けながら話し掛ける。

もうちょい相手してほしゅうて、もうちょい視界に入りとうて。

「あーもう。近付かないでよ。私、立てないでしょ?」

振り返って俺との距離を見て、机を押し返す。

立てるスペース分くらいは空けてたと思うやけど…

「めっちゃ冷たい奴やな。えぇやん、近付いても」

「暑苦しいから嫌」

きっぱり拒否されて、それでも俺の心に火を付ける。

「ほんなら後ろから扇いだろか?」

「それはそれで気持ち悪いからいらない」

「気持ち悪いて…何やねん、それ…」

身を乗り出して彼女の首筋にふーッ。

息を吹き掛けると、彼女の体はビクッとして首筋にまで鳥肌が立つ。

「忍足ッ」

「ちょい涼しゅうなったやろ?鳥肌立つくらい」

「気持ち悪いって言ったでしょ?次、やったら刺すわよ」

強がりともわからない、飾らない彼女の言葉。

それが、どれほど俺を燃え上がらせているか…

きっと彼女は知らない。知る由もない。

「おーコワッ」

どれほど俺の心を掴んでいることか…

「刺されても、志月に悪戯する価値あんねん」

「…何でよ」

振り返って、俺の顔を見つめる彼女に微笑みを浮かべた。

「何よ…その微笑み」

「わっからへんかなぁ」

「…わからなくて結構」

俺の話を聞かないまま、彼女は怒って前を向いてしまった。

「ホンマ、かわえぇわ」

くすくす笑いながら、俺はまた身を乗り出す。


「…好きやから」

「……寝言は寝てる時に言いやがれッ」

罵声と共に辞書が頭に落とされた。



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