LA - テニス
□05-06 PC短編
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みんな、平等に優しい。
気付いてはいたけど…
勝手だけど、この時間だけは…
消された言葉-2-
コートのベンチに座って部員観察。
がっくんがよく跳んでた、とか
跡部が破滅への輪舞曲の後に自分に酔ってた、とか
そんなコトを観察して日誌に書いていく。
「外してんじゃねぇよ、このノーコンがッ」
「す、すみませんッ」
宍戸は今日も怒声を上げてる。
その宍戸の向かいのコートには…長太郎。
「次はちゃんと入れますから」
なんて言って…また外してる。
宍戸は更に怒って、長太郎の下へと近づいて指導開始。
「……」
微笑ましく思う。
何だかんだ言って、仲良さそうにしてるから。
「ゆい〜?」
「あ、ようやく起きた?ジロちゃん」
「うーん…」
私の隣、ベンチに横になっていたジロちゃん。
丸まったり、伸びたりして…
「もうちょい寝る…」
そう言って私の膝の上にコロン。
すぐにまた寝息なんかを漏らしてる。
まるで…猫みたい。
「もう起きないと跡部が怒るよ〜?」
「んー…」
「ホラ、もう跡部が……」
近づいた人影。
怒りに満ちた跡部の姿かと思えば…
「さっさと起きッ」
「忍足?」
「甘やかしたらアカンやろ」
ペッ、とジロちゃんを払って…地面へと落下。
さすがに目を覚ました様子。
「い、痛いC〜」
「起きたんやったら岳人がおるコートに入り」
そう言い放って…
「え?」
私の腕を掴んで歩き始める忍足。
「ちょっ…忍足?」
声を掛けても一切無視、有無言わさない様子。
次第にコートは遠ざかっていく。
「部活中ー…」
「自分、無防備すぎや」
「何よ…急に」
何を怒って、こんなトコまで…?
掴まれた手だって痛いし。
忍足の顔だって…怖いし。
「お前、ジロの頭ン中見たことあれへんやろ?」
そんなの…
「忍足だってないでしょ」
あるわけがない。
むしろ、そんなの見れないし。
「俺はジロと同じ男やで?」
「それがどうしたのよ」
「うっかり喰われてもしゃーないっちゅうことや」
「意味わかんないよッ」
言いたいことが見えてこない。
もっと簡潔に判りやすく…
「鈍感すぎや」
「アンタが判りやすく言えば…」
「お前が好きやねん」
あっさり、さっぱり、きっぱり…
とにかく…簡潔すぎじゃないですか?
「ゆい、鳳が好きなんやろ?」
無防備からジロちゃん、
忍足が私を好きで…って話が繋がってない。
「アイツ、彼女おんで」
繋がってないのに…
「え?」
「せやから、俺と付き合ってんか?」
繋がったのは…
私の好きな人に彼女がいる、という言葉だけ。
「意味…わかんないよ」
長太郎に…
彼女?
「長太郎に彼女が居て、ジロちゃんで、忍足と付き合う…?」
冷静に考えることの出来ない頭。
忍足の声は聞こえずに…
私はその場を去ることで、逃げた。
-2-