LA - テニス

05-06 PC短編
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優しい子だ、って思っていた。


冗談で言った言葉だって笑顔で受け止めて…
ちょっとした言葉に対しても返事はいつも真面目で…
気が利く、優しい、可愛い…


そんな後輩をどうしようもなく好きになった。










された言葉-1-










「手伝いますよ、志月先輩」

「チョタロー」


自分の荷物もあるくせに…
私の持っていた買い出しの荷物も一緒に持ってくれた。
決して軽いわけじゃないのに。


「全部持たなくても…」

「大丈夫ですよ。男ですから」


爽やかに笑って、見せた無垢な笑顔。
この笑顔に癒されてる自分。


「ありがとう」


彼の好意に甘えてみたり。


「どういたしまして」


必要以上に優しくて
私を『女の子』として扱ってくれる。
そんな優しい後輩。


「行きましょう。跡部先輩に怒られちゃいます」

「そうだね」


肩を並べて歩く道。
人目とか…気にしたりしないのかな?








長太郎って人気あるんだよ?
みんな、こうして歩いてみたいって思ってるはず。



少しだけ優越感。
少しだけ…彼女な気分。



コレ、マネージャーの特権だけど…
いつかはホンモノになりたい、って思ってる。








「じゃあ俺、着替えて行きますね」


部室前まで荷物を運んでもらって
長太郎が着替えるから、私はその外にいて…



「……顔、揺るんどるで?」



人の気配なんて感じなかった。


「お、忍足ッ」

「そんなにビックリせぇへんでも…」

「忘れ物でもした?」


タオルは…首に掛かってる。
ジャージに着替えてるし、ラケットだって持ってる。
特に部室に用はなさそうなんですが…


「ゆいがおらへんから迎えに来ただけやで?」

「…胡散くさ」


本人、爽やかな笑顔を作ったつもりなんだろうけど…
その笑顔、果てしなく邪悪なんですよ。
企みすら感じる。


「ひっどいなぁ…」

「自覚ないんでしょ?」

「いや、あるけどな」

「…みんな騙されてるんだね…」


友達曰く…彼になら騙されてもイイ。
でもね、本当に彼は胡散臭いよ。


「別に騙しとるってわけやないけどな」

「どうだか…」


無言で睨み合い。
それを知るはずもない長太郎が…


「あ、忍足先輩?」


やっぱり、みたいな顔で出てくる。
声は当然聞こえてたと思うんだけど…


「相変わらず仲がいいんですね」

「…本気で言ってるの?」

「ホラ、喧嘩するほど仲がイイって言うじゃないですか」


それは諺であって…実際は全く違う。
忍足と仲がいいなんて…


「あのね…」

「ラブラブやさかいな〜」

「違うでしょッ」


思わず突っ込み。


「夫婦漫才みたいですよ」


なんて言われて…
チクリ、痛むモノがあった。




何となく、わかってた。
長太郎はみんなに、平等に、優しいということ…




「…ほな、行こうや」



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