LA - テニス

TRAGIC LOVE
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嫌いだって…ハッキリ言ってもらえたら気が済む恋愛もあると思う。





嫌いだよ。





『私がココに来る理由は、観月が好きだからだよ』


そう口にしたのは、かれこれ一ヶ月前の話。

好きって気持ちが募りすぎて…気付けばいつも彼の部屋にいた。



『…もう寂しくはないでしょう?』


部屋に押し掛ける度に、彼はそう言って苦笑していた。そんな彼に私も苦笑するしかなかった。




私も彼も今年の春に聖ルドルフ学園へと編入して来た仲間だった。しかも同じ学校から…。


彼はテニスで引き抜かれ…補強組というカタチで編入し、私はただ単に親の転勤に付き合った先がココとなっただけだけど…運命めいた縁を感じていた。




…だけど…




「観月ッ。お菓子足りないよ。隠してないで出すッ」

「ココはコンビニじゃありません。それに隠してなんかいませんよ」

告白した答えはないまま、友達を続けている二人の関係…。






それが辛い






「観月…」

「はい?」

「…何でもない…」

私が彼の肩にもたれかかっても、彼の体の一部に触れたとしても、彼は動じることもなく普通にしている。


それは…私ではいけないという最大の証拠?


「…また寂しがりですか?仕方のない人ですね」

「…それとは違う」

私の言っている意味は彼には通じない。

彼はただ、なだめるかのように私の頭を撫でる。






私は確かに

『あなたが好き』

そう言ったはずなのに


なかったコトに

されてるのかな?



それって



…痛い…








私は不意に立ち上がって、彼を笑顔で見下ろした。

「じゃ、そろそろ帰るね。いつもありがと」

「いえ。非日常的な生活をありがとう」

泣きたいのを…帰りたくないのを我慢して、私は彼に背を向けた。

「…おやすみなさい」

いつもやって来るこの瞬間、どれほど引き留めて欲しくて…どれほど泣きわめいてでも傍に居たいか…あなたにはわからないと思う。

「はい。気を付けて下さいね?それから、また来て下さいね」

「…うん」

背中から聞こえる声に、私は後ろ髪を引かれる思いに振り返ってしまう。

「じゃ、ねッ」

わざと元気に振る舞って、私の内部を見せないようにしても…。

「……」

体は正直で…いつもキツく目を閉ざして涙を消そうとして歩く。


それを彼は知らない…。


歩く足取りは重く、だけどいたたまれなくて速くなる。


『また来て下さい』


そんな優しい言葉なんか掛けないで?






…私はすでに…

限界を越えている






「…もう…ヤダ…ッ」

その言葉はあなたに届くわけもなく、この涙はあなたに知られることもない。


『嫌いだよ』


その一言を吐いてくれたなら、どれほど私が楽になることか…。

楽になるのに…。







宙ぶらりな私の気持ちは、逆に吊られているらしく…いつもあなたの方向に集まっている。



吊された男が、脳に血が溜まるかのように…。



その私を吊している糸を断ち切ってくれたなら、きっと私の体は落下してゆき、昇っていた血も冷めていくわ。





痛いほどに



それを望んでいる

自分の姿が見える






「…どうしたらいいの…?誰か…教えて…ッ」








一言でいい



その一言だけで

私は解放されるの



望みを持つことは

もう疲れちゃったの



だから言って?



『嫌いだよ』

…って。







END
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