LA - テニス

TRAGIC LOVE
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実感





人の死ってあっけないっていうけど、本当に笑っちゃうくらいあっけないってこと、ようやくわかったよ。



葬式に参列するのは初めてで、周りがみんな泣いていて…俺は実感もなく歩く。



『キヨッ!!』



後ろから今でもそんな声が聞こえるから、いつまでも錯覚に思えるのかな?



「…ゆい?」



振り返った先に、君の姿なんかはないけど…。










どこにもいない






棺の前、いつも以上に白くて綺麗な君がいた。



「清純君が…来てくれてるわよ…ゆい…」

棺に向かって、おばさんは涙を流しながら語り掛けていて…。

「おばさん…」

魂のない『ゆい』という人形は、反応すらしてはくれない。

「ゆい…」

その肌に触れても…温かくもなければ、いつものような罵声すら聞こえてこない…。









『ちょ…ッ。くすぐったいから…触らないでよ…キヨッ』



いつでも俺が触れる度にそう言って、でも抵抗もなく受け入れてくれて…。



『キヨだから…こんなこと出来るんだからッ』



これがいつもの君の決まり文句で…。






目を醒まして






「ねぇ…そろそろ起きてよ。俺、ゆいが起きないなら浮気とか…しちゃうかもしれないよ?」






答えはなく、実感のない頭よりも先に…涙が溢れて…。






「いつもゆいが怒って…喧嘩すんのだけはヤだったから……口利いてもらえないのはヤだから……だから起きてくれよッ!!」



棺を揺らし、彼女の体を揺らしても起きなくて…。



「千石ッ!!」

「離せよ…こいつは目醒ますんだよ…生きてんだよッ!!」

手枷が付いたかのように重いと思っていたら、近くの人から押さえられていて…そのまま会場から追い出された。








何度も、何度も、何度も…。



ゆいの傍へと近付いては追い出された。






そして

彼女は棺ごと
連れ去られた





『キヨ…』



最後にそう呼ぶ彼女の声は、消えるような…悲しみをぶつけるような声だった…。







END
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