LA - テニス
□TRAGIC LOVE
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遺書
人工呼吸器のチューブが外される日がやって来た。
誰もが反対した立ち会いに、俺は無理を言って立ち会った。
君の両親に頭を下げて…。
「ではチューブを外しますが、本当によろしいですか?」
「……ハイ」
「臓器提供意思カードにご本人とご家族の署名があります。それに従って臓器の摘出を行いますが、それもよろしいですか?」
「……ハイ」
涙を流しながら、彼女の両親がそう言った。
彼女は遺書の代わりに、こんなカタチのモノを遺書として残していたなんて…俺は知らなかった。
『こんなコト言いたくないけど…もし、私の意識がなくなって…国光のキスでも目が覚めなくなったら…』
その言葉の続きは…彼女は言わずに口を閉じた。
言ってしまえば、それが本当になってしまう…それを恐れていたのかもしれない。
「では、外します」
担当医がそう言って、チューブを外す作業を始めた。
俺はその様子をしっかりと見つめていた。
自分で呼吸をすることの出来なくなった体は、ゆっくりと心拍数を下げて…停止した。
「……ッ」
言葉にならない想いが…涙になって溢れ、頬を伝っていった。
『……目覚めなかったら…私から目をそらさずに…最後の姿を国光の目に焼き付けて…』
私が最後まで言わなくても、あなたにはわかってたんだね?
そんな顔しないで?
私が死んでも、私の臓器で助かる人がいるはずなんだから…。
ね…?
頭のいいあなたならわかるよね?
これが私の遺書だったの。
死ぬ前の最後の意思。
わかるよね?
いつまでも悲しまないで?
また必ず、あなたを求めてくれる人が現れるから…。
そしたら…
幸せでいて…?
ただ、私の誕生日だけでいいから…。
私を思い出して?
一人…私のために泣いて下さい…。
END